12月 15 2013

理工系・人文社会系のコンベンションマニュアル(8)最終回

前回はフェーズ11として、会議を演出するには最も重要な部分について説明しました。会議の顔である開会式や、参加者交流をさらに深めるためのエクスカーションなどは、うまく準備し実施することで参加者の感動を生みます。近年ではエクスカーションのない会議も増えていますが、その代わりにその他のソーシャルファンクションで良い演出をしても良いと思います。例えば、開会式の冒頭でアトラクション(例えば、バンケットで見せる地域の郷土芸能)を実施したりすることも、参加者をあっと言わせる演出かもしれません。今回は最終回として、フェーズ12として会議直前準備、フェーズ13として開催時期、およびフェーズ14として事後処理について説明します。

 

フェーズ12:直前準備時期3(6週間〜1週間前)

・参加者への配布物作成:どの会議に参加しても大体参加者が受け取る参加者キットは決まっているが、参加者はいつも何をもらえるか期待している。特に、会議プログラムと予稿集、およびネームタグ以外にどのような情報を得られるか、どのようなものをもらえるか気になるところである。

・  ネームカード:会議規模が20〜30名なら不要かもしれないが、一般的に会議の必須アイテムである。特に、外国人参加者がいる会議であれば、ネームタグに国名を見えるように書いておくことで、参加者交流が広がることもある。また、ファーストネームを大きく示すことで、参加者同士がより仲良くなることもある。ネームタグのデザインはよく考えて作成すべきである。

・  チケット類:会議バンケットやレセプションが公の場で開催される場合、チケットが必要なことがある。また、参加者ごとにバンケット参加の可否などの複数の区分がある場合で飲食物が準備される場合、準備した以上の人数がバンケット会場に現れると困るため、チケットは必要となる。また、ランチなどが一般のレストランなどで提供される場合などもチケットが必要となる場合が多い。

・  パーティー招待状:VIP会議や招待制のアフターコンベンションパーティーなどが実施される場合、招待状を準備する。

・  コングレス・バッグ:会議で配布する物品を入れるバッグに、会議ロゴや会議名をプリントすることで、参加者にとって記念となる。しかし、近年ではバッグを配布しない会議も出てきている。我が国においては、有償(安価)または無償で、会議開催地のコンベンションビューローなどが紙袋を提供する地域もあり、それを活用できることもある。

・  領収書作成:領収書は、各参加者の参加登録料支払いに関する金額を示すものを作成する。もし、非営利組織(NPOなど)の場合は、どのような支払い方でも原則収入印紙の貼付けは免除される。ただし、出版物の販売やパーティーチケットの販売は、営利活動と見なされる場合がある。クレジットカード払いの場合は、債権扱いになるため、収入印紙はどのような場合でも貼付ける必要はない。

・  次回開催フライヤー:会議開催中に多くの参加者が集まるので、そこでの広報はメールなどにより広報するよりは大きな効果が見込める。次回の会議開催の案内等、会議開催中にフライヤーとして配布し、また、開会式やバンケット時などに広くアナウンスすることで、大きな効果を生むことができる。

・  会議記念品:会議参加者に対して、レジストレーションデスクにおいて、論文集や名札とともに配布するものとして、会議参加の記念品がある。例えば、会議名のロゴの入ったUSBメモリやボールペンなどが考えられる。会議名を入れたタオルや、傘などは実用性にも富んでいるため、ウケがいい。

・  印刷物:会議プログラムと予稿集の配布において、その数量は事前参加申込者数より多少多く準備しておく。会議期間中に、プログラムを紛失した、あるいは宿泊しているホテルの客室に忘れてきたなどにより、プログラムを追加で求める参加者がいるだけではなく、予稿集や論文集について、追加で購入する参加者もいる。

・受付デスク用マテリアル準備

・  参加者リスト:会議レジストレーションデスクにおいて、エントリーした者が実際に参加しているかどうか、あるいは参加者ごとに配布物が異なる場合の確認用として、参加者リストを作成する。以前にそのリストの作成について説明したが、それを受付デスクに置いておくことで、問い合わせがあった際に役に立つ。学会などのスポンサーがついている会議の場合、no show rate(会議に現れなかった発表者の割合や名簿など)を報告する必要があるため、そのためにも、レジストレーションデスクにおいて参加者リストを準備しておくことが望ましい場合が多い。

・  電源プラグ:万が一、日本の電源プラグに合わないプラグしか持たない参加者にとって必要となることもあるが、準備は必須ではない。もし、会議開催地が地方である場合、入手が容易ではないため、多少の準備があれば参加者にとっては助けとなる。

・  プリンタとPC:国際会議開催時に参加者の到着が航空機の遅延などにより遅くなる場合があり、その際は講演スケジュールのその場での変更が必要となることもある。あるいは、オンサイトレジストレーションがなされた場合、領収書のプリントアウトが必要となることもある。

・  両替サービス:地方の場合や、近くにATMがない場合、会議受付デスクでの両替サービスのニーズはあるが必須ではない。外貨の準備をすればそれだけ余分なコストがかかる。

・会議用機材および人員等の確認:会議で用いる機材等を準備する。会議によって準備するものは異なるので、ここでは標準的なもののみを取り上げる。

・  バナー、看板類:バナーとは、会議場入り口や全体会の会場に掲げる会議名を記した横断幕である。バナーを掲げたい場合、使い勝手を高めるため、サイズの異なる2、3種類を作成しておくこともある。掲げる場所としては、会議場入り口、全体会会場、バンケット会場などがある。しかし、欧米の会議ではバナーを作成することはポピュラーではなく、日本やアジアに多く見られる風景である。看板については、準備の仕方は様々である。一つは、会議受付デスクまでのガイドとなるように配置することが多いと考えられる。その際には、会議のロゴや略称を示しておくと良い。会議名のフルネームを示すと文字サイズが小さくなり、目立ちにくくなる。

・  各種ボランティア募集: 会議で必要なサポート人員について募集する。会議準備時期に作業を行わせたい場合、早い時期に確保することが重要である。会議会場において配置する場合、誰でもできる業務のところに配置する。ボランティアスタッフには、自主的に業務をこなすことについてあまり期待してはならない。

・  登録受付デスク運営、要員:受付デスクにおいて参加者が殺到して混乱をきたさないように業務の手順を簡素化し、明確化することが望ましい。例えば、参加者ごとに配布物が異なる場合、受付デスク業務が煩雑になる。そこで、受付区分ごとのレーンを設置したり、あるいは、配布キットなどを事前に分けておくなど様々な工夫をすべきである。受付要員スタッフは、英語を話せない学生などをおく会議もあるが、業務手順をうまく決めておけば、英語が話せない学生でもできないことはない。

・  買い出し等雑用要員:会議開催時に備品買い出しや、プロジェクタ交換などが必要になることもあるため、最低限1、2名の余裕を持った要員準備が望ましい。受付デスクが一段落すれば、その要員をこの業務につかせることができるので、受付デスクの要員数に余裕がある場合は、追加の要員の準備は考えなくても良い場合がある。

・写真、道案内等:参加者が空港や最寄りの駅から会場までたどり着けるように案内をウェブページに掲載することが望ましい。会議参加者が大規模(2000人以上など)の場合、空港や駅に要員を配置する場合もある。会議が小規模の場合、コスト面や効率面の観点から、事前のアナウンスによる案内を充実させることが望ましい。のぼり旗や看板も一つの工夫であるが、道路使用届等の手続きが必要となる。

・会議場準備:会議場に準備すべき標準的なアイテムについて列挙する。会議の性質ごとに異なる部分もある。

・  会議使用計画の作成:最終的に、どの部屋をどの時間を借上げるのかを会議場に知らせる。

・  全体会・分科会場準備・機材手配:椅子のレイアウト、入り口や非常口の確認、会場間で参加者の移動がある場合、導線を確認し、分かりにくい場合、案内板が必要となる場合もある。

・  データプロジェクタ:自前で準備する場合、部屋のサイズ、スクリーンのサイズを確認し、十分な輝度のものを準備する。予備として、1、2台多く準備することが望ましい。

・  電源タップ:プロジェクタ用だけではなく、会議スタッフ控え室用、受付デスク用、その他会場用など十分な数を準備しておくことが望ましい。

・  会議パネル(サインボード)、部屋番号:会場内での参加者への案内について分かりやすく表示する必要があるが、過剰に準備する必要はない。多くの日本での会議では、過剰な場合が多い。会議プログラムに記載したそれぞれの分科会での部屋番号が分かりやすくなるようにする。

・  Wifi:会議場でWifiサービスが提供されていない場合、必要に応じて主催者が準備することもある。法律に抵触しない準備が必要である。

・  会場オペレーション準備:だれがどのような対応や動きをするのか、どの時間に常駐するのかなどを明確にしておく。また、参加者からのリクエストについて、誰が何を受け付けるのか、どう処理するのかについてまとめておく。例えば、これを共有することで、担当が会場にいない場合でもボランティア要員でも対応できることもある。考えられるリクエストや解決などすべて事前に考える必要はない。原則、現場対応で準備する。

・  インフォメーションサービス(観光デスク):会場案内については受付デスクで対応できるが、例えば主催者が観光案内デスクを設置したい場合、地域のコンベンションビューローに相談する。コンベンションビューローによっては、安価または有償ボランティアにより観光案内デスクを準備してくれるところもある。観光案内デスクは、参加者にとって役に立つことが多い。

・プレス対応:会議の内容が一般市民にとってなじみがある、あるいは有意義である場合や、地方で国際会議が開催される場合は新聞やテレビによる取材が行われる場合がある。ある程度決まった時間にお願いされるため、事前に調整しておく必要がある。報道に対応することで、一般市民から学術に対する理解が大きく深まるので受け付けることが望ましい。

・各種イベント準備:会議によっては、レセプションやアトラクションについて外注割合を少なくすることがあるが、その際は会議主催者側が準備する負担も大きい。その場合、メインイベントである国際会議運営に支障のないよう準備を行うべきである。会議場からレセプション会場まで移動がある場合、主催者や会議の役員がどこにいるかを把握できるようにしておいたほうがよい。レセプション会場の設営などの準備がある場合、会場での運営について、他の担当者が対応できるように事前に調整しておく。

 

フェーズ13:開催時期(2週間前〜会議開催当日)

・登録デスク配置:会議場のどの場所に受付デスクを並べれば、混雑緩和になるのか、あるいは参加者が何か尋ねたい場合に気軽に立ち寄れるかなどを考えて配置する。例えば、廊下に配置する場合、人通りが多いと考えられる場所、入り口に近い場所、廊下の一番奥の場所などそれぞれで利便性が大きく異なる。入り口に近い場所の場合、会議場へのアクセスの邪魔になることもあるが、セキュリティチェックの働きもある。もし、廊下ではなく会議室を一つ借りてそこに設置する場合でも、設置した部屋の場所により利便性は変化する。もっともポピュラーなのは、会議場で開催する場合はホワイエのところ、公共施設の場合は全体会場や分科会開催の部屋に近い場所、大学を一部利用する場合は公共施設と同様に開催場所に近い場所、大学を全部利用する際には大学の入り口にもっとも近い建物の1階かキャンパスの中心部などが考えられる。ただし、会議場や公共施設などは設置場所を指定されたり、制限されたりするので事前に確認しておいた方がよい。その他、参加者数が多い場合には次のようなデスクを準備しておくことで混雑が緩和される。

・  事前登録した参加者用デスク

・  当日登録する参加者用デスク(オンサイトレジストレーション)

・  総合案内、クレーム対応

・受付デスク運営:前に受付デスク要員の説明をしたが、実際の運営においては、はじめのうちは参加者対応については主催者が近くにいた方が安心であるが、ある程度軌道に乗ればボランティア要員や学生ボランティアでもうまく対処できることが多い。もし雇い入れる場合は、会議の中日以降は要員の数を減らしても業務に支障を及ぼさない場合が多く、コストの節約ができる。

・当日会場運営:会場運営において、開催当日に主催者がすべき業務をできるだけ減らすように計画しておく必要がある。当日に様々なタスクが発生するからである。例えば、参加者から「ホテルを予約したはずなのにホテルの確認がとれずチェックインできない」などの問い合わせがくることもある。そこで、当日の会場の責任者とサブ責任者を、ローカルアレンジメント委員長や運営委員などに頼むと良い。会場運営での意思決定は、できるだけ即座に行う必要があるものがおおいため、望ましい人選を行う。その他、会場運営において必要とされる業務について、次に説明する。

・  開会式会場設営:開会式の会場を最終チェックする。会議場のスタッフがセッティングなどをしてくれる場合があるが、最終チェックや段取りなどは簡単に打ち合わせておく。開会式でスライドを使用する場合は、事前に作成して、プロジェクタチェックを行っておく。

・  開会式リハーサル実施:開会式の段取りをミーティング形式で打合せ(リハーサル)する。もし、アトラクション提供や来賓の挨拶が少ない場合は、リハーサル形式でなくともよい。どの段階で誰が登壇し、何について説明するのかを確認する。もし、来賓の挨拶がいくつか続く場合は、来賓が話をする順番、時間、形式、紹介のタイミングなどを来賓に伝えておく。

・  国際会議開催:多くの場合、受付デスクをオープンさせるところから始まる。受付デスクをオープンするための準備中に参加者が現れることもあるが、決められたオープン時間まで待ってもらうことが望ましい。準備中に受付をすると、準備が遅れるだけではなく、その状況を目にした他の参加者も受付デスクを訪れ、業務の遅れや混乱を招くことになる。受付デスクでは、事前申し込み者への対応以外の、当日受付の参加者対応の確認をしておく。例えば、受け取った参加費をどこでどのように管理するのか、どのように領収書を発行するのかなどがある。また、名札をその場で印刷するのか、それとも白紙の名札に名刺を差し込んでもらうのか、手書きで名前を書いてもらうのか、など最終確認をする。受付デスクをオープンさせ、受付業務を実施したと、一段落したところで、受付係や受付責任者は、合間で受付デスクを整理したり、その後に参加者が殺到した際に配布される配布グッズが十分に足りているかなど確認しておく。受付を行った参加者が、領収書の発行や何かリクエストをした際に、すぐさま準備できないものについては、例えば、受付業務が一段落する時刻、たとえば、2日目の午後に立ち寄ってもらい受け取るように説明しておく。当然、受付業務の合間に、その参加者に渡すべきものなどを準備しておく。会議の後半になり、参加者の受付が少なくなってくることが予想される場合、朝の準備の際に、受付デスクの縮小をしておいてもよい。受付デスクの準備の後は、多くの主催者は、参加者への挨拶に追われることになる。例えば、過去に会った参加者や、会議実行委員、開会式の為に訪れた来賓などとの挨拶でほとんどの時間が取られる。従って、その間の業務を他の委員に指示をし、主催者自身ですべき仕事の残しておかないようにしたい。

・  開会式実施:開会式はできるだけ華やかにやるとよい。一つの工夫は、挨拶を元気にする、ジョークを入れる、あるいは、開会式前にあえてコーヒーや軽食を準備するなどがある。開会式は、あらかじめ準備した段取りで実施するが、例えば多忙な市長が公務のため突然来られなくなることもあるので、臨機応変に実施する。開会式の時間が短くなることもあるが、延びることもある。その場合には、開会式終了時に、次のイベントの開始時間の変更などを参加者に伝える。

・  基調講演等実施:基調講演は会議の一つの重要なイベントである。基調講演者が会議開催地に到着しているのか、会議場に来ているのかなど、ある程度把握しておく必要がある。実際に、航空機の遅れや、アクシデントなどで基調講演実施の時間に間に合わない例もあるため、バックアッププランを準備しておく。バックアッププランの例としては、代理の講演者をたてたり、すでに会議場に現れている参加者のうち適切な参加者を選び、パネルディスカッションに切り替えたりすることが考えられる。それらは事前に考えておくのではなく、基調講演開催当日の1時間前くらいに考える。基調講演の質疑の後、クローズする前に檀上で講演者に記念品やプラーク(盾)などを渡すとよい。

・  レセプション開催:レセプションは、多くの場合、開会式前日や開会式の日の夕方から開催されることがあるが、特に決まりはない。会期が長い場合は、複数回開催してもよい。会議最終日の前日に実施してもよいし、閉会式が夕方になる場合、「adjournment party」など開催してもよい。レセプションにおいては、簡単なウェルカムなどの挨拶を主催者が行う。ここで、来賓を呼び、挨拶してもらってもよい。

・  バンケット開催:バンケットは、会議において最も重要なイベントであり、参加者の交流を大きく促進するイベントである。バンケットは、正餐でもよいし、立食でも構わない。また、会議によっては、バンケットは正会員のみの参加や、学生料金などの割引参加料金を支払った参加者以外が対象となることもある。バンケットにおいて、参加者を楽しませる演出があれば望ましい。当然ながら、主催者挨拶や来賓挨拶などは考えられるが、その他にレストランシェフの紹介やホテルの支配人の挨拶なども考えられる。その他に、例えば、地域芸能などのアトラクションはその一つである。地域のコンベンションビューローに相談すれば、紹介してもらえる。

・  コーヒーブレイク:コーヒーブレイクは、多くの参加者が集まる場であるので、十分なスペースをとった方がよい。コーヒーブレイクの近くに観光案内デスクなどをおくことも一つの工夫である。コーヒーブレイクは、午前午後それぞれ1回ずつ開催されることもあるが、朝から夕方まで終日準備してもよい。また、午前中には、時差ぼけなどで朝食を逃した参加者もいることが考えられるので、軽食を準備しても良い。また、もし午後に2回実施する際には、2回目にはワインなどのアルコールを準備してもよい。予算の範囲で、参加者同士の交流を促進し、満足となるような実施がのぞまれる。

・  ランチ:会議でランチを提供する形式は様々である。ランチボックスはコスト面において最も優れているが、ベジタリアンや参加者の体調に合わせた提供は難しい。レストランなどで実施する場合は、バフェ形式が望ましい。その他に、もし、近隣に複数のレストランがある場合は、事前にそれらのレストランと交渉、調整し、どのレストランでも利用できる食券で対応してもよい。ランチは、オプションであるので、必ずしも提供する必要はない。また、会議期間中に1回のみ使えるチケットの提供などでも構わない。

 

フェーズ14:完了時期(会議開催当日〜2ヶ月)

・寄付金等清算:会場の受付デスクで寄付金を募ったり、事前に募ったりする場合、その使途をより明確に示す義務がある。補助金や助成金の場合は、より制限が厳しくなる。余剰が生じる場合、補助金等の場合は返還が求められる。

・収支報告:収支報告書は、会議のステークホルダーに提出し、公示する義務がある。海外の国際会議のいくつかは営利目的であるものもあり、そのような会議は収支報告が示されない。そのように思われるのは望ましくないので、必要以上に気を配る必要がある。収支報告書について、多くの場合、予算の使途がおかしいと指摘されることはないが、補助金等を得ている場合は、その規定に抵触しないように説明する必要がある。収支報告においての項目は、収入の部と支出の部にわけて、収入の部の項目として、主として会議参加費、寄付金、補助金や助成金、学会からの協賛金、その他の雑収入から構成される。一方で、支出の部の項目として、主として会議施設費、会議施設備品費、印刷製本費(予稿集、プログラム、フライヤーなど)、通信運搬費、広報費、開催会議費(コーヒーブレイクなど)、レセプション費、バンケット費、事務費、各種制作費、雑費、会議費、人件費(有償ボランティア)などがある。その他、PCOへの委託をする際には、委託業者管理費、事後処理委託費、運営要員関係費などが付け加わる。

・打ち上げ:会議スタッフやボランティアの打ち上げは、常識的な範囲内で実施し、関係者を労う意味で重要である。

・終了報告:以上を終えた後に終了報告を会議運営委員などに簡単な報告書として作成する。報告書は、多くの場合、補助金や助成金を提供してくれる団体や自治体などに提出することもある。また、次回の会議主催者に対して、詳細に説明をすることで、次回の会議準備や開催の助けとなる。

・お礼状:寄付金を提供した企業や参加者、団体にお礼状を送付する。この送付でかかった費用も支出項目に含まれることを忘れてはならない。お礼状には、次回の会議でも支援してもらえるように、簡単で良いが注意深く作成する。特に、この寄付の支援により、どれだけの効果が得られたかを寄付者への感謝ととともに説明することが望ましい。

 

以上、最終回として、開催直前の準備、開催時、および完了時の業務について説明しました。これをもって8回のシリーズとして解説した「理工系・人文社会系のコンベンションマニュアル」としますが、ここで説明したことは、最低限のレベルにとどまる部分も多く、十分に伝えきれていないものもあります。今後の記事において、それらについて適宜補足をするつもりですが、読者の方にもしご不明な点やご質問、アドバイス、コンサル等のご要望がありましたら、お気軽にお問い合わせください。会議主催者としてなすべきことは、常に参加者の笑顔を考えて、会議の主役である参加者の満足度を高める業務を実施することです。主催者としてより良いサービスを提供する業務を果たすために、学会の都合で実施せず、次のことを常に考えて企画、準備、開催をするとよいでしょう。それは、(1)参加者の笑顔、(2)会議の主役は参加者、(3)参加者を会議開催地、会議場、会議に「慣れさせる」、「集わせる」、「感動させる」、の3つです。これにより、参加者が会議に参加して良かったと思えば、後に家族や友人とプライベートで訪問してくれることもあり、会議開催でお世話になった地域へのさらなる経済効果の面で貢献もできます。

12月 01 2013

理工系・人文社会系のコンベンションマニュアル(7)

前回は、フェーズ9および10として、出版物の準備や直前準備時期に関する説明をしました。これらのフェーズに関しては、早めに済ませられれば出来る限り早いうちに取り組んだ方が望ましいです。なぜならば、この後のフェーズ11は、現場業務や準備実務が主となるからです。今日はフェーズ11として直前準備時期2について説明します。直前準備時期2は、会議で必要な物品の準備や会場確認などが含まれるため、煩雑さが増しますが、ここが成功させる国際会議の一番のコアとなる業務群の一つであり、注意深くすすめる必要があります。

 

フェーズ11:直前準備時期2(2ヶ月〜2週間前)

・最終調整期:直前準備時期、およびその次のフェーズ12である開催時期を含めたスケジュールや役割分担について確認をとる。

・開会式準備:開会式で必要となるものを準備するとともに、手順について確認する。必要となるものとしては次のものが考えられる。

・  開会式会場に掲げるバナー(横断幕)の準備:欧米では一般的ではないが、日本やアジア諸国では、開会式会場などの大会議場には、バナーを掲げる会議が多い。バナーを専用に制作する業者も多数あり、一幕1〜5万円程度で制作が可能である。事前に会議場をチェックして、サイズを確認しておくことが望ましい。バナーは、その他、受付デスク周辺、会議場の正門や建物の入り口、バンケット会場やレセプション会場に掲げることもあり、まとめて制作するとよい。各地コンベンションビューローが制作を有償で支援することもある。

・  開会式において挨拶する段取りと依頼:開会式での挨拶は、学会のファウンダー、会長、国際会議の統括委員長、実行委員長、および来賓などから構成される。特に、来賓に関しては、早めにコンタクトを取っておくことが望ましい。

・  報道等:テレビ局や新聞社が開会式の模様を取材することもある。取材依頼を受け入れれば、地域への広報だけではなく、各委員の意識向上にもつながる。

・  配布物の制作:開会式において配布する印刷物等を制作する。特に、会議において実施されるバンケットやバンケット会場までのアクセス方法、関連する国際会議の紹介、次回の開催案内、基調講演等の情報、会議に関わった委員長の紹介などが考えられる。

・  開会式でのオーディオやデータプロジェクタの確認:開会式において、マイクやデータプロジェクタ、スクリーンを使用する際には、事前に利用できるかどうかを確認する。

・  開会式用のスライド準備:開会式において使用するスライドを準備する。スライドの内容は、歓迎の言葉、会議の概要、歴史、投稿論文数と採択状況、論文集の出版について、各種観光案内などが含まれる。場合によっては次回の開催の告知なども含めると良い。歓迎の言葉や会議概要、歴史などは統括委員長が挨拶とともに説明するとよい。会議の中身の詳細については、実行委員長が説明を行う。特に、ランチ場所、コーヒーブレイクの場所、レセプションやバンケットへの参加の案内については、実行委員長が開会式で説明すると効果的である。

・  開会式計画作成:開会式が滞りなく実施されるために、開会式用のプログラムを簡単に作成し、各種委員長で共有することが望ましい。

 ・コーヒーブレイク準備:コーヒーブレイクについて、複数の実施形態があり、主として次の3つである。(1)ホテルなどからのケータリング:最もコストが大きくなる形態ではあるが、コーヒーサーバー、カップなど豪華に見せることができる。欠点としては、ホテルによっては、主催者が希望するドリンクを提供してもらえないこともあることである。また、注意すべきことは、コーヒーブレイク1回あたりの課金ではなく、杯単位での課金であること、スタッフの出張料金などが高額であることなどが挙げられる。ランチやレセプションをホテルで実施する際には、交渉によっては、コーヒーブレイクは、無料、または安価で提供されることもある。目安の額としては、1杯あたり、500〜1200円程度である。(2)ケータリング業者による提供:近年、イベント等へのドリンクなどのケータリングは安価になってきている。また、多種のドリンク提供も可能な業者が多い。目安としては、1杯あたり、200〜600円程度であるが、飲み放題で一人当たり400〜1000円と料金設定している業者もある。例えば、飲み放題600円、200人規模で会期中5回のコーヒーブレイク実施の場合、トータルで60万円となる。(3)自前で準備する場合:国内学会などの参加費収入が少ない場合の最もポピュラーな方法である。しかし、見栄えが悪いため、提供の工夫が必要である。例えば、缶ジュースやコーヒーを多種大量に購入し準備し、大きな容器の中に氷を敷き、そこにドリンクを置いておくようにすると、見栄えは良くなる。缶ジュースはコストが高くなるように見えるが、実は案外安い。スーパーマーケットなどで販売されている80円程度の缶の飲み物(実際の定価は120円)を1日あたり1000本、3日間準備しても25万円以内でおさまる。

・ランチ手配・準備、食事メニュー考案:会議によってはランチを提供する会議もあるが、必須ではない。近隣に適当な飲食店がない場合は、ランチをケータリングすることもある。例えば、コンビニなどに頼めば、会議期間中に大量にサンドイッチや弁当などを準備してもらえる。ケータリング業者に頼むよりは安価にはなるが、ベジタリアンなどの対応が難しい場合もある。ホテルやレストランに手配する際には、バフェ形式にしておけば、ベジタリアン対応もしやすく、また時差ぼけや体調が優れず、自分のペースで昼食をとりたいと考える参加者への配慮もしやすい。提供するランチの内容については、貸し切りでレストランを利用する場合、予算に応じた料理の内容の相談も可能である。ただし、まだまだわが国においては、提供する側の意識が低く、フレキシブルな対応をとれないレストランが極めて多いため、昼食会場はいくつかの候補を挙げて比較して探した方がよい。国際会議場においてケータリングにより、昼食を提供する際には、一般的に昼食会場の使用料、場合によっては清掃代金を請求されるため、注意が必要である。その会場使用料を含めてランチの支出となることを忘れてはならない。

・レセプション・各種ウェルカムパーティー準備:会議レセプションは日本においてはホテルのパーティー会場などで企画されることが多いが、特徴がなく、参加者にとってはつまらない。ユニークな開催会場を考案することが望ましい。例えば、お城の中や博物館などでの開催、市場や商店街での開催などは、海外からの参加者にとって関心が高いものとなる。ただし、季節や天候を考えた実施が望ましい。その他、レセプション実施のためには次のことを考えておく必要がある。ホテルやレストランの他に、ケータリングでの提供、または自前で準備する方法が考えられる。

・  レセプション参加者数見積もり、開催場所の広さチェック:参加人数をレジストレーションの数から予想し、開催場所のスペースの広さをチェックする。例えば、立食と着席では必要となるスペースは異なる。

・  食事メニュー考案:提供される料理や飲み物について、予算と照らし合わせながら考える。欧米の会議ではレセプションは一般的には、飲み物と簡単なスナック(チーズ、クラッカーなど)を準備することが多い。日本においては、料理を準備する主催者が多いが、その結果、バンケットとの差異がなくなり、あるいはレセプションでの支出がかさみ、バンケットが貧弱となる会議もある。バンケットのほうが会議ディナーとしてのメインイベントであるため、予算と照らし合わせて、うまく実施計画を立てることが望ましい。

・  実施計画の立案:レセプションの実施において、その段取りをうまく考えることで効果的な実施が可能となる。レセプションでは、次のような段取りが考えられる。まず、実行委員長よりウェルカムスピーチを実施し、続いて来賓からの挨拶、そのあとで地域コンベンションビューローや観光協会より簡単な挨拶、その後統括委員長より乾杯の挨拶などである。ただし、開始から乾杯までは15分以内となるようにすることが望ましい。

・  レセプション会場の音響や装飾:しばしば忘れがちになりやすいものとして、レセプション会場のマイクや、装飾に関してである。バナーを張る会議もある。

・バンケット準備:バンケットは、会議において最も大きな支出項目である場合が多く、企画段階から常に参加者の満足度を意識しながら準備を進めて行くことが肝要である。バンケットの開催形態は様々であるが、ホテルのボールルームを利用したオーソドックスなものから、ディナークルーズなどユニークなものがある。近年では、飲食費に加えてバンケット会場費が必要となり大きなコストが必要なホテルでの開催より、日本旅館や料亭、お城や博物館などでの開催が人気を集めており、また海外からの参加者にとっては、そのような開催が感動を生む。ホテルやレストラン以外での開催の場合、ケータリングが考えられるが、ホテルやケータリング業者からのケータリングが一般的である。ただし、施設によっては、施設と契約している業者を使うよう求められることもあるため、事前に確認が必要である。次にバンケットの準備に関連した事項について説明する。

・  バンケット会場へのアクセス案内:会議場からバンケット会場まで離れている場合、徒歩や公共交通機関を利用した移動の場合は、ウェブページおよび会議参加者に配布するキットの中に案内書を入れ、配布することが必須である。また、場合によっては、バスの準備が必要となる場合もある。従って、バンケット会場を探す際に、バスでの移動が必要な場合は、その分のコストも発生することは忘れてはならない。

・  バンケット実施形態と予算の確保:国際会議のバンケットは一般的に一人当たり5000〜15000円程度であるが、会議の予算に応じて決定するべきである。多くのバンケット会場(ケータリング業者)は、予算の相談に応じてくれる場合があり、きちんと伝える必要がある。中には、大学のイベントで、予算が無尽蔵にあると思い込んで、とんでもない額の見積りを提示するホテルもあるので、注意が必要である。複数の会場(業者)をはかりにかけて選ぶことが望ましい。また、複数の業者を競争させ、試食を行い、選定することがより参加者の満足度を高めることにつながる。

・  食事メニュー考案:近年、我が国でもハラルフードの準備の必要性が認識されているが、もっとも効率的な方法は、バフェ形式によるバンケットである。コースの場合、好き嫌いがある場合もある上に、参加者それぞれのペースで食事をとることが難しいため、食事の提供の仕方やタイミングに工夫が必要となる。バフェ形式であれば、それらはクリアされるだけではなく、宗教的あるいは嗜好に基づいて、参加者自らが食べたいものを選べるために人気がある。ただし、できるだけ、その地域の特産を提供することがより効果的なバンケットを実現する鍵となる。例えば、洋食を中心としたバンケットでは、参加者はなぜ日本に来て偽の西洋料理を食べなければならないのかと感じるかもしれない。例えば、バフェで提供する料理の内容については、ホテル(業者)と相談することが可能であり、どういう構成にするかを考えた方がよい。また、バフェにおいて食べ物を置いたテーブルの配置の仕方でサーブしにくかったり、一部のものだけほとんど手をつけられなかったりする場合がある。

・  バンケット実施計画の立案:バンケットにおいても、レセプションと同様に段取りを決めておくと良い。一般的にレセプションと同様の段取りで良いが、途中でビンゴ大会など実施してお土産を渡すイベント、地域のアトラクション、次回の会議の案内などを入れるとより効果的になる。

・エクスカーション手配・準備:近年、かなり減ってきているとはいえ、滞在時間の短い参加者や地域に多く知識を持たない参加者にとっては、エクスカーションは有意義となる。エクスカーションには、次の3つの実施形態がある。一つ目は、会議参加者全員が参加する形態のエクスカーションであり、会議主催者は、旅行会社と事前に相談する必要がある。エクスカーションの実施は、会議開催前、会議開催中、会議開催後のどこで開催するかを決め、各参加者にアナウンスしておく必要がある。バンケットやレセプションが実施されない場合は、会議開催中に半日会議を実施せずにエクスカーションを実施することもありうる。会議開催前後の場合だと、開催地に到着が遅れたり、あるいは早く出発する参加者は参加できないことになる。二つ目は、会議参加者のうち、希望者のみがエクスカーションに参加する形態である。この場合、一つないしは複数のコースを準備しておき、最小催行人数を超えた場合、実施することになることが多い。また、この形態の場合、エクスカーションに参加を希望する参加者からエクスカーションに関わる費用を徴収することが一般的である。三つ目は、地域の美術館、日本庭園、お城などの入場チケットを各参加者に配布し、それぞれの参加者が時間のとれるときに各々観光に行く形態である。自らの時間を強制的に拘束されないため、人気がある実施形態の一つである。会議場では観光案内デスク開設や、パンフレット配布を行うことでより効果的になる。いずれにしても、エクスカーション実施は、それなりのコストがかかるため、予算に十分に余裕のある場合に実施することが望ましい。

 

今回は、会議での各種イベント実施に関して説明しました。これらのイベントは参加者の心に残り、会議を効果的に演出する最も重要なものの一つであるので、主催者は参加者の気持ちになって準備を進めて行くことが肝要です。煩雑な会議準備に追われて疲弊している時期かもしれませんが、ここが会議の成功か失敗の分岐点になることも多いため、しっかり準備する必要があります。簡単な方法として、例えばバンケットの料理、レセプションの実施場所、コーヒーブレイクでの飲食物について、それぞれ試食や視察をする際に「自分が参加者の立場ならうれしいか?自分の家族を連れて行きたいか?」などを考えながら選定、準備すれば、より品質の高いイベントが提供できることは間違いありません。次回はこのシリーズの最終回ですが、さらに直前の準備時期として、各参加者への配布物、会場の準備について、および会議期間中のオペレーションやクレーム対応などについて説明します。また、会議終了後の完了報告やお礼状の作成について説明します。

11月 15 2013

理工系・人文社会系のコンベンションマニュアル(6)

前回は、フェーズ8として、会議登録に関して説明しました。会議によっては、登録区分が複数あり、参加者リストの作成において、業務が複雑になるため、慎重に行う必要があります。会議登録を自動化することにより、一気にその業務付加は軽減しますが、自動化のためには参加申込システムの運用が必要となり、その準備である程度の手間がかかります。参加者数が30人程度以下の小規模会議によっては、システムを準備することで、かえって仕事量が増えてしまうこともあるので、注意が必要です。定期的に繰り返し会議を開催する主催者にとっては、申し込みシステムは必需品となることでしょう。申し込みシステムなどをどうやって準備したら良いかなど、疑問がありましたら、お問い合わせくださればと思います。さて、今回は、フェーズ9および10として、印刷出版業務および直前の準備について説明します。印刷出版業務については、主として会議プログラム印刷、会議予稿集印刷業務があります。会議によっては、予稿集を出版せず、会議後に出版する場合もあります。

 

フェーズ9:論文出版業務

・最終原稿と登録の催促:早期登録(Early registration)の期日に合わせて、最終原稿の提出期限を設定することが多い。ある時期に、論文だけ送って、レジストレーションをしない投稿者がいたため、近年では、レジストレーションと最終原稿投稿をクロスチェックすることが主流である。論文採録通知にレジストレーション情報と最終原稿提出案内を含めるが、どちらか一方のみをおこなったり、あるいは、最終原稿提出先に指定したところではなく、初稿の提出先にアップロードしたりする著者もいるので注意が必要である。

・各種コンテンツ準備:論文集には、本文だけではなく、その他様々なコンテンツが入る。例えば、表紙デザイン、扉、目次、preface、委員名簿である。さらに、忘れてはならないのは、基調講演や招待講演の概要、チュートリアル原稿、パネルディスカッションの概要などの全体会合に関するコンテンツである。また、prefaceについては、会議統括委員長と実行委員長、ワークショップ委員長など必要に応じて複数にわけて作成する。会議統括委員長のprefaceには、一般的な挨拶や会議の歴史、プログラム委員や基調講演者に対する謝辞などが含まれる。実行委員長のprefaceには、企画セッションの数、分科会への論文投稿数と採録率、基調講演者やチュートリアルなどの会議の情報、統括委員長への謝辞、その他実行委員、実地委員などへの謝辞が含まれる。

・出版形態:いくつかの出版形態がある。一つは、自前でデータを編集し、印刷製本をおこなう、または印刷所にデータを持ち込むという方法である。もう一つは、出版社との出版契約を結び、場合によっては市販される書籍・資料として出版する方法である。さらに、最近多くなっているのが、自前でオンラインでの出版がある。

・抄録印刷:会議によっては、論文集が複数のボリュームとなりすべてを配布できない場合もある。あるいは、論文自体はオンラインやCD-ROMで出版し、会議場で、適当な発表を探すことを助けるために、抄録集のみを印刷物として出版することもある。または、会議プログラムと抄録集を合本して出版することもある。会議プログラム作成については、フェーズ10を参照されたい。

 

・自前で印刷出版を行う場合:自前で出版する場合の大まかな手順を記す。

・  印刷会社の選定:近年ではウェブで見積りが取れる。しかし、品質に関して事前にチェックできない印刷業者も存在するため、注意が必要である。また、ウェブに情報を出していない地元の小さな印刷工場のほうが、安価で品質が良いケースもあるので、ウェブだけに頼らないほうがよい。

・  必要に応じて、ISBNやISSNを取得する。継続的に会議を実施し、定期的な出版物とする場合,ISSNを取得する。ISSN取得は、ISSN日本センター(国立国会図書館 収集書誌部 逐次刊行物・特別資料課 整理係)に申請し、取得する。ISSNの取得は無料で、短期間で可能である。ISBNやISSNを取得した際には、表紙や扉に番号を記載することを忘れてはならない。

・  表紙デザイン、扉、目次、preface、委員名簿を準備する。表紙デザインは、印刷の際にきれいに出力されるように解像度が高くなるようにする。目次の構成には、本文の部分だけではなく、扉、Preface、会議組織委員なども含める。prefaceには、会議統括委員長(General chair、Conference chair)および会議実行委員長(Program chair)のメッセージが含まれる。

・  表紙デザイン、扉、目次、preface、本文、必要に応じて索引を含む一セットのデータ(PDFなど)を準備する。自前のプリンタや印刷機の場合、印刷は問題なくとも、綴じ方(製本)を工夫しなければ、かなり安っぽい仕上がりになるので、注意が必要である。

 

・出版社から出版する場合:この場合、いくつかのプロセスがある共通項目を説明した後で、主な2つのケースについて説明する。

・  (共通項目)業者に委託する際の契約:出版社から出版する場合には、出来る限り早く出版契約を取っておいたほうが望ましい。実際には、1stアナウンスメントより前に、出版社に出版のためのプロポーザルを提案し、出版契約を取っておく必要がある。国際会議の出版物に関して、例えばヨーロッパ大手の出版社から出版されるということが論文募集のフライヤーに記述できれば、その分広報の効果は大きくなる。従って、出版社より刊行する場合は、出来るだけ早い対応を行った方がよい。

・  (共通項目)出版費用については、出版社により異なる。例えば、ヨーロッパ大手の出版社の場合、すべての出版費用は無料で、10〜20冊の書籍が無料で送られてくる。会議開催時にまとめて購入する事で著者割引が受けられ、比較的安価となる。場合によっては、自前で印刷所に持ち込むより安くなる。出版社によっては、まとまった冊数を著者が買い取る責任を付した契約とし、出版費として支払いを課す出版社もあるが、たいていはマイナー出版社であることが多い(販路が狭く、売る自身がないため、著者に支払いを課す)。

・  (ケース1—1)出版社によっては、表紙デザイン、扉、目次、索引などを作成してくれる。その場合、原稿と掲載する順番、prefaceや委員名簿、および本文原稿を準備し、出版社に送付する。大手の出版社の場合、カメラレディ原稿を各著者から提出させるシステムを持つところもある。その際、採録された著者に最終原稿提出先を知らせる必要がある。

・  (ケース1—2)カメラレディ原稿を著者から直接出版社に送付させる際には、ほとんどの場合、出版社によりフォーマットチェックがなされるが、レジストレーションした著者が原稿を提出したかどうか、あるいは原稿を提出した著者がレジストレーションをしたかどうかは、主催者がチェックする事が多い。ここでの見落としは、後のトラブルとなることがあるので、注意した方がよい。

・  (ケース2−1)論文集のテンプレートのみを準備し、あとは主催者または出版委員長にすべてを制作させる出版社もある。多くは、小規模出版社であるが、世界大手のSpringerの場合、シリーズによってはこの形態を採用している。一部の出版社は、表紙デザインくらいは作成してくれる。

・  (ケース2−2)その他のデータ、すなわち扉、目次、preface、委員名簿、本文原稿、索引をテンプレートに流し込み、チェックする。特に気をつけたいのは、目次のページ数および異なるフォーマットで提出してきた著者の原稿の編集である。前者は注意深く行えばよいが、後者については、論文ごとに見栄えが異なることになる。しかし、多少の見栄えの違いについては問題とならない(細かいことを気にする委員などから指摘された場合は、制約上無理であることを伝えておいた方がよい)。

 

・オンラインまたはCD-ROMで出版する場合:この場合、上記より、多少短期間で出版可能となる。また、自前で出版する場合とほとんど同様である。

・  必要に応じてISBNやISSNを取得する。オンライン版またはCD-ROM版用の番号があるので、それを取得する。

・  自前で印刷する場合と同様に、必要なコンテンツを準備する。その際に、上記と異なるのは、目次をクリックすれば、それぞれの論文が現れるようにリンクをつける点である。また、索引のページ番号にもリンクをつけるとよい。将来的に、印刷物として出版する可能性がある場合も含めて準備する方がよい。

 

 

フェーズ10:直前準備時期1(4〜1ヶ月前)

・登録確認証(領収書)発行:領収書の発行については、2つのパターンがある。一つは、支払われた際に、速やかにメール等で送付する方法である。もう一つは、国際会議の受付デスクで渡す方法である。どちらの方法を採用しても問題はないが、国内参加者のみのイベントの場合、振込による支払いの場合、銀行から発行される振込確認票を領収書に代えることができる。また、クレジットカードによる支払いの場合、債権扱いとなるため領収書の印紙は必要なくなり、その代わり、領収書にクレジットカード払いを明示することができる。現地での現金払いの際の印紙貼付けの扱いについては、サービスとしての提供のウェイトによる。例えば、単なる会費でそれが直接的なサービスに対応していない場合は、貼付けの義務はない。一方、会議場で販売する論文集の価格が3万円の場合、200円の収入印紙が必要となる。ただし、国際会議を主催する団体の法人格(NPOのようにそもそも収入印紙は一切不要)による差異もあるため確認が必要である。

・入国査証取得手続きのサポート(1):国際会議には、日本入国を目的とした偽りの参加申込が含まれる場合も存在する。例えば、論文発表者ではなく、さらに対象の研究分野の専門家ではない(例えば、民間企業のマネージャー、学校の校長、調査会社などの名義での偽りがある)のに、参加申込を行う場合がある。また、ブローカーや組織的なケースも存在し、その際は、連絡も頻繁であり、参加費の払いもよいため、だまされないように注意が必要である。このような場合、偽造カードによるレジストレーションのケースも多い。非常に疑わしい場合は、invitation letterは発行すべきではなく、invitation letterを発行した場合でも、そのような人物の情報を入管に知らせておく事が望ましい。

・入国査証取得手続きのサポート(2):実際にinvitation letterを作成する際に、身元引受に関する書類が必要になるケースがある。記入は簡単であるが、もし、非常に疑わしい参加者が日本国内で姿を消した場合は、記入者の責任になるため注意が必要である。入国査証取得手続き書類の送付においては、近年の日本との関係が問題となっている国においては、数十人分を送ったにもかかわらず、ほとんど相手のもとに届かなかったケースもあるため、費用は高くなるが郵便の所在が分かるEMSなどを利用することが望ましい。

・会議プログラム編成:国際会議のプログラム作成について、論文集作成とリンクさせる場合もあり、その場合はフェーズ9と並行して作業を行う。プログラム作成において留意する点は下記の通りである。

・  開会式:主催団体役員、会議統括委員長、実行委員長、来賓の挨拶を含める

・  関連委員達とのスケジュール確認:例えば、チュートリアル委員長が、チュートリアルの時間に自らの研究発表が実施されるのは望ましくない。だれがどこにいるのか、どの出番なのかについて、確認しておく。

・  発表者の確認:発表者から来日や旅行に関して、論文の発表日のリクエストがある場合があり、その変更を反映できるように、多少ゆとりをもってタイムスロットを準備しておく。

・  発表者の時間割、部屋割の決定:分科会の場合、複数のテーマとなるが、関連のあるテーマは近い部屋にセッティングしたほうが望ましい。また、非常に人気のあるテーマについては、多少大きい部屋に割り当てるなどの工夫が必要。また、発表順についても、ファンダメンタルな内容の発表はセッションの前のほうに持ってくるなど、工夫をすることが望ましい。分科会場の部屋番号を記載する。

・  レジストレーション受付:会議受付デスクの開業時間について記載しておく。

・  ランチの時間と場所、コーヒーブレイクの時間と場所、レセプションの時間と場所、バンケットの時間と場所について記載する。また、バンケット会場までバスで移動の場合、集合場所だけではなく、参加者によっては自力で会場に来ることもあるので、アクセスの仕方なども記載する。

・  抄録:必要に応じて、プログラムに論文のアブストラクトを掲載することも考えられる。なお、基調講演、招待講演、チュートリアル、パネルディスカッションなどの情報は、プログラムにもある程度詳細に記載した方が望ましい。

・プログラムの印刷:会議プログラムは、国際会議のWeb上に掲載することで、参加者が会議に参加する前の情報収集として助けとなる。プログラムの印刷については、自前のプリンタで作成されることもあるが、その際には、しっかりとした製本機や中とじ用ステープラーを利用するとよい。また、予算が確保できている場合は、見栄えよく制作できる印刷所での作成もある。印刷所での印刷製本での所要日数は、各業者に聞いておいた方が望ましい(繁忙期でかなり時間がかかる場合もあるため)。

 

今回は、フェーズ9および10として、印刷物や査証関連、プログラム作成について説明しました。この段階にくると、準備がかなり軌道に乗ってくるのと同時に、様々な問題や数多い参加者からの問い合わせをうけることになります。この段階で、大切にケアしておく事で、会議期間中に参加者が快適に滞在できることにつながり、また会場で主催者にたいするコンタクトも増えますので、このケアは重要といえます。次回は、フェーズ11として、さらに直前の準備について説明します。バンケット会場の選定など会議開催の中身に直接関係のある事項が増えてきます。

11月 01 2013

理工系・人文社会系のコンベンションマニュアル(5)

前回は、フェーズ7として、論文受付期間の業務に関連して説明しました。今回は、論文受付の後に重要となる会議参加受付に関して説明します。論文受付と同様に全体で最も重要な業務の一つであり、ここがしっかりしていないと会議当日の受付デスクに混乱をきたす原因ともなります。

 

フェーズ8:参加受付期間(6〜2ヶ月前)

・金額の設定:参加費の設定は、注意深く行う必要がある。参加費の価格設定は、大まかに分ければ、イベント開催告知の前にすでに決まっている場合と、参加者数に応じて決める場合がある。注意すべき点は、前者の場合、事前に参加費を知ることができるため、もし、潜在的参加者にとって価格が高いと感じられた場合、論文の投稿が得られないことにつながる。後者の場合、参加費が論文投稿前に知らされておらず、採否決定の時期あたりで参加見込み数に応じて決定され、著者に知らされるので、その価格が高いと感じられる場合、論文が取り下げられる可能性もある。従って、前者のほうが望ましいが、もし、財務会計上不安があるのであれば、収入の項目ではなく、支出の項目の変更の余地について、考慮に入れておいた方が望ましい。(例えば、参加者数が非常に少なく、売上が少ない場合は、当初着席型のバンケットで考えていたものを、立食形式にして、コストカットを試みるなど)

・参加登録方法:大まかにいくつかの会議登録方法が存在する。一番オーソドックスなのはクレジットカード払いによる参加登録方法である。その他に、PayPal、銀行振込、現地での現金払いなどが存在するが、参加者の負担としてはクレジットカードが最も簡便である。PayPalを用いる場合、国際会議の団体が任意団体扱いの場合、委員長個人としての参加費受付になる。一方で、団体が法人の場合、事前にPayPalにより法人の審査が行われ、その後口座開設となる。銀行振込の場合、一般的に国際/海外送金の場合、手数料が3,000〜7,000円程度かかるため、参加者にとって大きな負担となる。また、現地での現金払いの場合、現金を持ち歩く必要があるため、精神的に負担となる。従って、最善と思われるのがクレジットカードによる決済であるが、これを利用するには主催者はクレジットカード会社と加盟店契約を結ぶ必要がある。審査には、最低2週間かかり、審査に落ちる可能性もあるので、余裕をもってすすめることが望ましい。任意団体の場合、クレジットカード加盟店契約を結ぶことは容易ではないが、国際会議専用の加盟店契約も準備されているカード会社もある。また、PCOなどが決済システムをレンタルしてくれるサービスもあるため、それを利用することも考えられる。ただし、他のサービスと抱き合わせにさせられることもあり、トータルで高価になる。自前で、カード加盟店契約を行った場合は、「特定商取引に関する法律に基づく表記」をサイトに記載しておく必要がある。その英語でのサンプルを下に示す。

 

Act on Specified Commercial Transactions
Organization Registration Management of AAAA 2014
Contact Prof. Tokuro Matsuo
Office Hours 12:00AM-11:59PM (by e-mail)
Address Faculty of Engineering, Todai University, 1-1-1, Shinjuku Tokyo, 140-0000, Japan.
E-mail Aaaa2014office@todai-u.edu
Tel/ Fax +81-3-999-0000
Rates Tax included. Attendee selects items based on his/her participation type.
Trading by the Internet, Fax, and on-site
Payment by credit card VISA, Master card
Distribution Each customer must show the credit card for deposit. Please print out the confirmation of payment and show the registration desk at the conference after you get the conference venue.
Conference Venue Kyodai University, Kyoto, Japan
Canceling Policy Reservation fee is non-refundable. Thank you for your understanding.

 

・参加登録:会議の参加登録区分は、一般的に複数存在する。まず、早期割引を適用した参加区分、一般の参加区分、および現地での当日受付の区分である。さらに、論文の著者の枠、ワークショップあるいはチュートリアルのみの枠、本会議のみの枠、ソーシャルファンクション(バンケットやレセプション)のみの枠などがあり、それでもって、各枠には、学生と一般の区別、学会の会員と非会員の区別があり、整理するには一見難しそうに見える。多くの会議は、早期割引と論文の著者の枠とを一つにしていることが多い。これは、著者が最終原稿のみを提出し、原稿の出版をさせて、参加費を支払わないという事態を避けるためである。「著者は早期割引期間に参加申込をしなければならない」と多くの国際会議のレジストレーションサイトに記載されているのはこのためである。つまり、レジストレーションの早期割引期間が終わったあとに、提出された原稿の印刷業務が始まるというわけである。この期間の終了直前または終了後に、原稿提出者がレジストレーションをしていない場合は、期限を決めて催促する。催促に応じなかったら、その原稿は論文集から除外し、出版にまわす。著者およびレジストレーションのリストには、自動的に取り下げられたように記載し、その論文は発表されないため、分かりやすく明示しておく。

下の表は、レジストレーションの価格表の例である。まず、早期割引申し込み区分、一般区分、および現地参加申込区分のように3つに分けると見やすい。そのうえで、一般と学生、および非会員と会員のように分けておくと、一目瞭然である。この参加の際に会員になれば、会員価格で参加登録できる学会も多い。その際には、会員会費を払うことで大きなディスカウントがあるように見せることが望ましい。

 

Item/price list Member * Non-member

Early registration

Author registration

750 USD

900 USD

Student author registration

450 USD

650 USD

2nd/3rd paper publication fee

400 USD

500 USD

Early audience

550 USD

700 USD

Early student audience

400 USD

500 USD

Extra page charge (per page)

80 USD

100 USD

Extra proceedings

90 USD

120 USD

Extra social event ticket

100 USD

130 USD

Late registration

Audience

650 USD

800 USD

Student audience

500 USD

600 USD

Extra proceedings

90 USD

120 USD

Extra social event ticket

100 USD

130 USD

Onsite registration

Audience

800 USD

1,000 USD

Student audience

600 USD

800 USD

Extra proceedings

110 USD

140 USD

Extra social event ticket

120 USD

150 USD

* If you join in our organization as general/student member before the conference registration, you can save money to register and attend to the conference. Membership is good for calendar year only.

 

・早期登録締切日延長判断(登録見込数との比較・検討):もし、論文締切などが延長されていれば、期間に余裕のある限り、レジストレーションの期間も延長を行うことが考えられる。

・早期登録者リスト作成:もし、論文集に含める論文を確定させるため、著者に早期登録をさせる場合は、先に作成した論文投稿リストに著者によってレジストレーションされたかどうか、支払い金額はいくらであったかなどを記入する。論文投稿システムと受付システムでデータを一元的に管理しておけば、この作業は省かれる。もし、論文採択され、最終原稿を提出している著者がレジストレーションを行っていない場合は、すぐさまレジストレーションを行うように催促する。72時間以内などと設定し、著者に通知した上で、レジストレーションが行われない場合は、自動的に論文は取り下げ(不採択)となる。

・早期登録者受付終了:催促による登録者の受付など、早期登録者の受付が終了したら、すぐにカード支払いなどのサイトに関して、一般登録、Late registration用に変更する。また、その際に、早期登録の区分の中で使わない項目あるので、注意する。

・登録者リストの関係者への配布・共有:個人情報であるので注する必要があるが、国際会議が複数の小会議やイベントにより構成されている場合は、それぞれの小会議やイベントの責任者が、自分の枠での参加者リストを知ることが望ましいため、情報共有を行うことが考えられる。

・通常参加登録/Late registration:著者以外に、例えば発表者の指導教員や共同研究者、一般的に聴講を行いたい参加者が会議への登録を行うことも多い。多くの場合、本来の国際会議の参加者であるのであるが、まれに犯罪がらみのケースがあるため注意すべき必要がある。日本国内で国際会議を開催する場合、いくつかの国から日本への入国を目的とした国際会議参加が行われることがある。つまり、元々国際会議へ参加することが目的ではなく、それを口実に日本への入国のビザを手に入れるということである。このような場合、レジストレーションで使われるカードも偽造である場合も多いため注意が必要である。

・キャンセル対応:参加登録を行ったものうち、キャンセルを申し出る登録者も存在する。例えば、他の仕事と重なったり、予算で旅費が工面できない場合は、キャンセル手続きを行われる場合がある。キャンセルは、予定していた売上が変更となり、予算の使途計画の変更にもつながりうるので、主催者にとってはうれしくないことである。キャンセルでの返金については、サイトにあらかじめそのポリシーを明示しておく必要がある。下記はその例である。

 

Refund Policy
Refund of payment in case of registration cancellation is:
Cancellation before October 25, 2013: 50% of payment is charged for the penalty.
Cancellation after October 26, 2013 will not be proceeded and not be refunded.

 

・最終登録者数確認(登録見込数との比較・検討):ここでのレジストレーション数について、当初の登録見込み数との比較を行い、支出計画の変更が必要かどうかを検討する。見込みと比べて大きく売上が少ない場合は、支出においてどこを削るのかを検討する。例えば、飲食、印刷物の紙質、案内板を簡易な物にする、分科会場を小さい部屋に変更する、分科会場の部屋数を減らす、プロジェクタ等のレンタル機器に関して自前でかきあつめて準備する、コーヒーブレイクの茶菓子をなくす、昼食は1回のみにする、など色々な策がある。

・継続的な参加者への連絡:参加申込を行った参加者は、旅行の準備のため、様々な情報を必要としている場合が多い。例えば、1)会議場へのアクセスについて、2)地域の気候や治安および物価について、3)会議プログラムについて、4)会議における受付時間やソーシャルファンクションの情報、5)その他追加の招待講演やイベントについて、などがある。逆に、参加者からの問い合わせとして、到着時刻の確認、ビザ申請・取得に関する質問、発表時間の変更リクエスト、ソーシャルイベントにおける飲食物の制限やリクエスト、その他、旅行情報の提供のリクエストなどがある。

・オンサイトレジストレーション:会議登録をオンラインで行わない参加者もいる。非常に忙しい研究者は、直前まで参加できるかどうかわからないため、事前にオンラインで参加申込はできないことも多い。そのような参加者は、前日に会議に参加できることが分かり、突然会議場に姿を現すことがある。従って、会議受付デスクで準備しておくものとして、白紙の名札などがあるが、これについては、後のフェーズで詳しく説明する。

 

 

今回は、フェーズ8として、会議登録について説明しました。会議登録については、主催者としては、最も重要な業務の一つです。お客様を迎えるという点だけではなく、ここで売上がある程度確定する訳ですので、その後の支出計画について縮小する必要があるのか、あるいは逆に参加者へのサービスがさらに充実するようにできるのか、などを考える必要があります。

10月 15 2013

理工系・人文社会系のコンベンションマニュアル(4)

前回は、フェーズ5および6として、それぞれ第2回目の広報および論文受付準備について説明しました。今日は、フェーズ7として、論文について説明します。論文受付といっても、アブストラクト提出の有無、論文査読の有無によって、そのスケジュールのたて方に違いがあります。下の表は、その区分を分類したものです。

 

論文

提出あり

提出なし

審査あり

審査なし

審査なし

アブストラクト

提出あり

審査あり

1

2

3

審査なし

4

5

6

提出なし

審査なし

7

8

9

 

このように、一般的に9つに分類されます。赤で示したケースは非常に多いケースであり、青で示したケースはしばしば見られるケースです。ケース1、6および9はあまり見られないケースです。とはいえ、基調講演や招待講演のみで構成されるイベントの場合はケース6が使われることがあり、また、審査が厳しく競争率の高い会議はケース1が使われることがあります。ケース1においては、事前にアブストラクトを提出させ、第一段階の審査を行い、その後論文全文を提出させ、第二段階の審査を行うケースとなります。ケース2、ケース4およびケース7は、このなかでも特に多いケースであると言えます。また、専門分野によっては、アブストラクトのみを審査し、そこでパスすればそのまま会議で発表となるケース3もしばしば見られます。さて、このケース分けをふまえて、フェーズ7の論文受付について説明します。

 

フェーズ7:論文受付期間(8〜5ヶ月前)

・論文受付開始:上記のケースごとにスケジュールが変わってくるので、締め切り日や採択通知の日程決めは慎重に行う必要がある。例えば、アブストラクト審査がなく、論文審査のみの場合は、審査期間はおおむね2〜6週間程度であるが、アブストラクト審査があり、論文審査がない場合は、審査期間は1〜3週間程度となる。一方で、前者の場合は、論文原稿が出来ていることが原則であるので、採択通知後に校正原稿を提出するまでの期間は2〜4週間であるが、後者の場合は、原稿が出来上がっている前提はないので、採択通知後に2〜8週間の最終原稿提出期間を設定する必要がある。

・論文受付終了:審査がない場合のケースにおいては、この時点をもって、原稿をまとめて印刷出版にまわす。審査がある場合は、各論文の専門分野を適切に審査できるように、査読委員を論文提出時に登録させたキーワードをもとに割り当てる。会議支援システムによっては、審査委員に投稿された全ての論文を提示し、審査したいまたは審査できる論文を選ばせる機能を持つものもある。

・採点者、点数、評価結果:論文審査者は基本的には非公開である。また、論文審査手順において、様々な観点(新規性、信頼性、妥当性、インパクト、プレゼンテーション、有効性など)において評点をつけさせ、その点数をベースに総合点を計算する評価結果方法と、総合点のみを入力させる方法がある。いずれにしても、論文審査においては、論文に関するコメント、疑問点、指摘点などを査読委員に入力させることが一般的である。

・結果発表と連絡:査読者の審査結果について、投稿者に採否を通知する。採否においては、下記のような適切な文書をつける。論文審査をパスした投稿者には、最終原稿の提出フォーマット、締め切り時期、提出方法、会議レジストレーション時期およびその方法などを明確に示す。論文審査をパスできなかった投稿者については、丁寧にその結果を伝えるとともに、聴講者として参加するケースもあるので、レジストレーションの方法や会議参加の案内について示すことが望ましい。

 

====採択通知の例===

メールの件名: AAAA 2013 Paper #215: Notification

Dear John Smith,

We are happy to inform you that your paper has been accepted for presentation at AAAA 2013.

Your paper was one of 75 accepted to AAAA 2013, out of 350 submissions. AAAA 2013 is a highly selective conference, and you are to be congratulated on your paper’s acceptance.

Please pay careful attention to the reviewers’ comments as you revise your paper to make it even better. Formatting and submission instructions for the final version of your paper can be found at http://www.aaaa2013conference.org/Publications/cameraready.html.

Please begin revising and reformatting your paper immediately, since both processes can be time-consuming. You will be allotted six pages in the Proceedings, and allowed to purchase up or two additional pages if you wish. The camera-ready version of your paper is due no later than Tuesday, July 10, 2013. This is a firm deadline. Please see author kit for further instructions.

All AAAA 2013 papers are scheduled for presentation Tuesday – Thursday, October 15 – 18, 2013. Your presentation at the conference should be limited to 25 minutes, with an additional 5 minutes for questions and answers. An LCD projector will be available in the presentation room. If you have any questions regarding the audio/visual equipment, or have additional requirements, please contact Tokuro Matsuo at contact@aaaa2013conference.org. Additional equipment MUST be requested no later than July 31, 2013.

Thank you for submitting your paper to the conference. We look forward to seeing you in Tokyo!

Sincerely,

Michael Lee

AAAA 2013 Program Chair

 

————- Review from Reviewer 1 ————-

Novelty: 5 [1(Low) – 10(High)]

Relevance: 10 [1(Low) – 10(High)]

Significance: 8 [1(Low) – 10(High)]

Presentation: 6 [1(Low) – 10(High)]

Effectiveness: 9 [1(Low) – 10(High)]

Overall: 9 [1(Low) – 10(High)]

– Comments to the author(s):

Comments

 

————- Review from Reviewer 2 ————-

:

:

 

不採択通知の例:

メールの件名: AAAA 2013 Paper #215: Notification

Dear John Smith,

Thank you for submitting your paper, listed below, to the AAAA 2013.  We regret having to inform you that your paper cannot be accepted for AAAA 2013.  AAAA 2013 received 350 submissions, out of which only 75 were accepted.  The reviews of your paper are attached.  We hope that you will find this feedback useful for your future work. We very much appreciate your submission and hope that you will submit papers to future AAAA conference, and that you will join us in Tokyo this autumn.

Sincerely, 

Michael Lee

AAAA 2013 Program Chair

————- Review from Reviewer 1 ————-

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・最終原稿のレジストレーション:一般的に、会議レジストレーションを行っていることが、原稿の出版の条件となるため、最終原稿の提出とレジストレーションの時期は同じか近い時期に設定する。この時期が離れてしまうと、投稿者がレジストレーションを行っているかどうかをチェックする際にややこしくなる場合がある。

・会議レジストレーション準備:論文の審査にパスした投稿者は、採択通知後に直ちに最終原稿を提出することもあるので、会議レジストレーションの準備は論文審査期間中に行っておくことが望ましい。(会議レジストレーションに関しては、次回説明します)

・キャンセル対応:論文採択後に仕事や旅費予算の都合上、会議に参加できなくなる投稿者もいるため、キャンセル対応が出来るように準備しておく。キャンセルのタイミングは、論文審査期間中に論文取り下げを行う場合、採択通知後に取り下げを行う場合、レジストレーション後にキャンセルを行う場合、および会議当日にキャンセルを行う場合がある。後者2つについては、返金が生じるため、注意が必要となる。特に、会議当日にキャンセルを行う参加者に関しては、フライトの遅延、故意の不参加などがあるが、それが故意であると判明した場合は、ブラックリストに載せて、次回の会議においては無条件に投稿できない処置をとることもある。故意の不参加の理由は、発表を行わず論文採択実績と出版物のみを得ることが目的の場合が多い。論文取り下げ自体は、そのまま、投稿がなかったものとして扱うことができるが、レジストレーション後のキャンセルは取り扱いに注意すべき場合がある。(レジストレーション後のキャンセルについては次回説明します)

・参加者データの保管・管理:論文投稿により作成されるリスト、レジストレーション時に作成されるリストがあるが、統合して作成するほうが後々使いやすい。データは、マイクロソフトエクセルファイルなどで管理すると使いやすい。会議支援システムによっては、システムで管理できるものもある。エクセルファイルによるデータの場合、下記のような作成をすると使いやすい。会議が複数の小会議で構成される場合を示しているが、一つの会議のみでの構成の場合、会議IDは必要ない。支払いのところの、CはCredit card、WはWire transferを示す。

 

会議ID 論文ID/申込ID 付加情報 最終原稿 レジストレーション 支払い 支払額 学生 論文タイトル 著者 所属 コンタクト Eメール 領収書名 論文投稿日 レジストレーション日
AAA 001 O O C 500 ** ** ** Japan Name ** Name
AAA 002 Halal food O O W 500 ** ** ** USA Name ** Name
BBB 001 Title Change O O C 400 Y ** ** ** Korea Name ** Name
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CCC 056 Audience - O C 500 N/A N/A ** China Name ** Name

 

 

今回は、論文投稿受付、および関連する業務について説明しました。次回はフェーズ8として、レジストレーション受付に関わる業務について説明します。

 

 

10月 01 2013

理工系・人文社会系のコンベンションマニュアル(3)

前回は、フェーズ3および4として、初期の準備時期の業務および基調講演の準備関係について説明しました。今日は、フェーズ5および6として、広報および論文受付準備について説明します。広報については、その力の入れ方で参加者の数やスポンサーの数が大きく変化することがあります。例えば、毎年定例で実施されている国際会議の場合、ある程度参加者層は固まっていますが、広報に力を入れれば、新しい層の参加者の獲得のチャンスが増えます。一方で、新しい会議や知名度の低い会議においては、会議の名称やテーマ自体を知らしめるチャンスとなり、その結果、参加者の興味、都合、あるいは参加できる範囲の地域などがマッチすれば参加してもらえる可能性が高くなります。参加者が増えればバンケットやコーヒーブレイクなどまとまった数の発注が可能となり、ディスカウントがきくことにより、より有利な財務の管理が可能となります。ここで節約できた潜在的支出をほかの使途にまわすことが可能となります。しかし、先述したように、あるいは私の日本政府観光局の記事のように広く広報を重複して出しすぎると、それだけでアカデミックスパムと呼ばれるような会議の質を疑われる結果になりますので、注意が必要です。論文受付の準備期間においては、受付方法の確認、著者からの問い合わせが主たる業務となりますが、実行委員会においてある程度情報共有が必要となります。例えば、実行委員の知り合いの研究者が論文を投稿しようと考えている状況において、委員長ではなく委員のほうに質問や問い合わせが行くことがあります。その際に、査読のフェーズ、受付方法など委員会であらかじめ決めておかないと答えられない質問もありますので、単に論文を受け付ければよいと考えず、簡単で良いですのでルールに関するコンセンサスを取っておく必要があります。

 

フェーズ5:各所に周知する時期2(12〜10ヶ月前)

・2ndアナウンス:会議の開催自体を知らせるのが1stアナウンスであるが、今回のアナウンスではより詳細な情報を提供する必要がある。特に、会議の日程、場所およびテーマは必ず確定しておかなければならない。

・2ndアナウンスメント作成:1stアナウンスと同様にメールベース、郵送ベース、あるいはメーリングリストベースで広報を行うが、それぞれの方法に合ったフォーマットを準備することが肝要となる。例えば、このようなアナウンスを多く受け取る研究者の場合、添付ファイルを開いてまでチェックするとは考えられず、メールでのアナウンスの場合、簡単なテキストメールあるいは、メールソフトに表示される際に見た目のhtmlメールが望ましい。また、郵送ベースの際には封を開けてもらえそうな封筒あるいは、封筒デザインにする。むしろ、はがきのほうが効果的な場合もある。メーリングリストの場合、添付ファイルや長い文章が示されているのは逆効果。多くのメールを受け取ることになるので、シンプルかつ、会議の情報が上から3〜5文で多く提供される書き方が望ましい。その3〜5文で興味を持ってもらえれば下まで読んでもらえる。

・2ndアナウンスメント配布:上に示したように3つの配布方法が考えられるが、個別に電話やFAXを用いることも効果がある。FAXの場合、頻繁に受信する研究者は多くないため、気を引かせることが出来ることがある。電話の場合、参加するかしないか迷っている潜在的参加者の背中を押してあげる効果がある。主催者として、まるで商売をしているような感じであるが、そうではなく、参加者が増えれば、各参加者が会議で得られる研究に関する有益な情報量も増加するため、参加者にとって満足度がより高くなるような会議が実施可能となる。また、先述の通り金銭面での有利さも働き、参加費の軽減、学生へのスカラーシップの提供、バンケットを豪華にすること、その他追加的なエクスカーションなどの提供が可能となり、参加者を一人でも増やすことで参加者の効用も増加する。

・メールマガジンの配布:会議によっては、定期的にメールマガジンを発行する会議もある。メールマガジンを発行する際の留意点は、同じ情報を継続的に提供するのではなく、会議のアナウンスも含めつつ、新しい情報を全面的に提供し、購読者の気を引く効果を持たせることが重要となる。例えば、会議の基調講演者が決まった際には、その情報だけではなく、テーマ、アブストラクトに加えて、基調講演者と交流できる時間の設定、あるいは学生参加者は基調講演者からメンタリングが受けられるような設定などの情報を提供することで、潜在的参加者が実際に参加してくれるようになりやすい。

・各種スケジュールの決定:論文締切時期、採否通知時期、最終原稿提出時期、参加申込締切時期などを広報において通知することで、参加者はより計画的に論文執筆や支払い計画をたてることができるため、必須とも言える。

 

フェーズ6:論文受付準備時期(10〜6ヶ月前)

・受付準備:論文の受付においては、郵送やメールで受付を行う旧来の方法から、近年では論文管理システムを用いた受付が主流となっている。論文管理システムには多くのフリーウェアが存在する。例えば下記は無料または安価に利用できるシステムである。このようなシステムの場合、研究者が所属する組織のサーバの環境により利用の可否が異なるが、会議によっては外部のレンタルサーバーなどを利用することもある。

Confmaster:http://www.confmaster.net

Openconf:http://www.openconf.com

Start V2:http://www.softconf.com

Easychair:http://www.easychair.org/‎

OCS:http://pkp.sfu.ca/?q=ocs

・締切の決定:先述の広報時に決めた締め切りを論文管理システムで設定する。もし、締め切り時期の延長を行う場合、システムでの日程の更新が必要となる。

・査読者の登録:論文の審査があるタイプの国際会議の場合、あらかじめ技術委員、査読委員をリクルーティングし、その情報をシステムに登録する。Openconfなどのように委員自らが登録できるシステムもある。

・査読者の担当領域決定:論文管理システムには、査読委員の専門分野と投稿された論文の専門分野のマッチングにより、効果的な論文割当を行う機能がついていることが多いので、論文管理システムを用いれば、インストールや設定で多少負担がかかっても、このフェーズにおいてかなりの負担軽減になる。もし、システムを用いない場合は、査読負担の偏りや、査読完了の有無などの管理に十分注意する。

・その他の留意事項:論文投稿時に、投稿者にどのような情報を提出させるかを決めておく必要がある。例えば、次の項目が考えられる。

・必須項目:論文名、著者名、連絡先、メールアドレス

・アブストラクト文字数決定

・共著者数上限の決定

・一般セッションかポスターセッションなど(カテゴリ)

・論文原稿提出の有無(査読対象により異なる)

・学生による投稿の有無(学生賞や参加費割引などの際に必要)

・論文の分野(査読割当の際に必要となる)

 

今回は、フェーズ5および6として、それぞれ第2回目の広報および論文受付準備について説明しました。論文受付準備において、論文管理システムを用いる場合、その設定に多少大変さを感じるかもしれませんが、一旦設定をしてしまえば、メールベースで行うより圧倒的に負担を軽減できます。次回は、実際に論文を受け付けるフェーズに関して、フェーズ7として説明します。

9月 15 2013

理工系・人文社会系のコンベンションマニュアル(2)

前回は、フェーズ1(立ち上げ時期)およびフェーズ2(各所に周知する時期)について説明しました。フェーズ1における立ち上げ時期は、開催地選定と重なることもある上に、経験の少ない会議主催者にとっては、はじめに何に手をつければ良いか分からないこともあり、心身ともに疲れる時期であることは疑いのないことだと思います。しかし、この時期に多少の不安があってもある種勢いで開催業務をすすめて行くことがベストな方法だと思います。一旦、開催地選定、立ち上げ時期に足を踏み入れれば、他のこともいろいろとすすめて行くこともできます。足りない部分、不安な部分はある程度問題先送りにして、必要となったときにそれに対処して行こうという気持ちを持つことが結果的に業務をスムーズに進められる秘訣だと思います。さて、今日はフェーズ3およびフェーズ4として準備時期に関して説明したいと思います。この準備時期は、会議の開催自体に直結して影響して行く部分ですので、非常に重要なフェーズとなります。

 

フェーズ3:準備時期1(18〜12ヶ月前)

・予算案作成:あくまでも案、目安。時々、予算案に従って支出を行っている会議があるが、ナンセンス。これに縛られると、会議参加者の満足度を大きく下げてしまうことになる。例えば、バンケット実施のためにレストランなどとの契約を早いうちにしてしまうと、後に参加費収入が少ない状況に陥った場合に、困ることになる。その結果、他の支出部分を大きくカットすることになり、バランスの悪い会議開催となってしまう。

・前年の会議への参加:参加した際に、その会議の良いところ、悪いところを記録しておく。このことで、より品質の高いイベントが実施可能となる。例えば、レジストレーションデスクでうまく参加者対応が出来ているか、バンケットの進行、コーヒーブレイクの際に提供される飲食は充実しているか、および観光ガイドデスクやガイドブックが配布されているかなど多数ある。

・過去のプログラムの参照:多くの場合、会議主催者は前年のイベントに参加することが多いため、雰囲気はつかめると思うが、どの程度の分科会場を準備すれば良いか、コーヒーブレイクや基調講演にどれくらいの時間を取れば良いかなどヒントになることもある。

・大まかな日程表案作成:会期は何日で、いつ開会式やバンケットを実施するかを決める。例えば、ワークショップやプレミーティングを実施する際は、開会式は会期の一番始めのイベントとなる訳ではなくなる。あるいは、夕日を見せるクルーズディナーバンケットなら、その日はセッションを早めに終わらせる必要があるので、この日程表案はフレキシブル性が高くなるよう、余裕をもって作ることが望ましい。多くの参加者に集まって欲しい基調講演や招待講演は、開会式の後やバンケットの前に開催するなどの工夫も必要。参加者の行動を頭に入れた日程案の作成が肝要となる。特に、参加者層により開始時間をうまく設定したほうが望ましい。例えば米国からの参加者の割合が非常に多い場合を考えてみる。米国からの便は夕方に日本に着く便が多いため、地方に移動する際に、成田空港か東京で1泊する必要があることも多い。従って、翌日は早朝から会議を開催するのではなく、午前の遅い時間や、午後から開会式を開催することも参加者にとって参加しやすい一つの形態である。

 

フェーズ4:準備時期2(15〜10ヶ月前)

・会場使用計画の決定:会場の予約は通常開催の1年前などのルールがある施設が多いため、その予約の時期にスムーズに日程や私用計画の概要がわかるようにしておいた方が望ましい。会場を押さえる際には、1〜2部屋程度多少多めに押さえておくことで、フレキシブル性が高まる。後に参加者数等で見直しの可能性があることを伝えておくと良い。

・プログラム骨子の検討:日程と場所が決まってくれば、施設の利用時間などの制約をふまえたプログラムの骨子作成が可能となる。そこで、イベントの効果を最大限にでき、また参加者が講演者の満足度、利便性が向上するプログラム案について大まかに検討する。下記は、私が過去に作成した日程表である。一つ目は、3並行セッションで構成された会議である。まず、開会式前日の日曜日にいくつかのセッションを準備している。これは、平日に出張しにくい研究者への配慮である。また、発表にナーバスになっている参加者もいるため、事前に会場の雰囲気をつかんでもらうことにも役に立つ。さらに、もし開会式の日にレジストレーションを設定すれば、一度に多くの人がデスクに殺到し、その分スタッフの数やデスクの数を多くする必要がある。メインとなる日程の前日にレジストレーションデスクをオープンさせれば、開会式当日の混雑緩和になる。また、この日は参加者がデスクを訪れる頻度は多くはなく、これは不慣れなスタッフにとって練習になり、翌日の開会式の日に良い仕事をしてもらえることにもつながる。開会式は月曜日の午後に設定している。これは、ヨーロッパ、オセアニア、東南アジアからの各便が早朝に日本に到着することなどを配慮している。3日目の基調講演後にポスター発表とコーヒーブレイクを同時に実施することにより、コーヒーブレイクの時間が実質長くなる。これは、基調講演セッション後に基調講演者と交流を深めたい参加者への配慮も含まれる。最終日にフォーラムディスカッションを実施するのは、2つの意味合いがある。次回の会議の品質を向上させるために各種意見を聞くこと、さらに会議参加で疲れた参加者にとって、最終日に宿泊していきたいという意見も多いため、このような時間設定にしている。また、最終日のこの時間に終了することで、北米やアジアなど各国の帰国便の時間に対して利便性がよい。当然ながら、ほかにも様々なプログラム構成案は考えられるが、その各種例については別の機会に解説する。

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・メインテーマの決定:第二版の広報時において、参加者をより多く集めるためにメインテーマが設定されることがある。また、例えば土木の分野においても、環境をテーマにした際には、基調講演やパネルディスカッションにおいては環境に関わることをテーマに講演者やパネリストをそろえる必要がある。

・基調講演者の決定:第二版の広報を出す際にある程度記載しておいた方が、参加者を集めるために効果がある。基調講演者の依頼について、一人の枠に依頼するのに同時に複数の人に可能性を聞くことできないため、段取りよく行うことが望ましい。

・基調講演者の前後活動の確認:国際会議に参加し、基調講演を行うためだけの渡航ならシンプルであるが、前後に大学や観光などの計画を入れる講演者もいるため、送迎の計画などのためにもある程度聞いておいた方がよい。また、基調講演の旅費や謝金、宿泊予約などに関連してもこの時期にある程度考えておく必要がある。ただし、基調講演については、講演者にとってそれだけで大きな業績になることと、若手育成学界育成のためのボランティアとして位置づけられているため、旅費や謝金については出す必要がないと考える学会も多く、また講演者もそれを了承してくれる場合が多い。宿泊予約などをする際に、基調講演者の個人情報をある程度把握しておく必要がある。

・講演依頼:講演依頼については、正式な依頼状として制作し、送付することが望ましい。ひな形としては、下の図に示す通りのものである。

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・具体的な条件等の決定および基調講演者・招待講演者への通知:基調講演者や招待講演者は一般の参加者とは異なり、論文や原稿を提出する必要がない形態をとる国際会議も多い。従って、基調講演者や招待講演者が決まった時点で主催者は安心しがちであるが、次の事柄についてはある程度これらの講演者に伝えておく必要がある。なお、アブストラクトや原稿の提出時期は、この時期ではなく一般講演者の原稿提出時期に合わせてもよい。

・具体的な講演内容の依頼:日時、演題テーマなど

・具体的な招請条件の交渉:参加費無料、謝金など

・アブストラクト、略歴の依頼:提出時期、写真データの有無など

・旅程の確認:空港到着時刻、滞在可能期間など

・当日使用できる機材の通知:データプロジェクタなど

・最終スケジュールの確認:開催2ヶ月前程度でもよい

・座長決定:会議プログラム作成時でもよい

・事前打ち合わせ:通訳をつける場合、講演の前日か当日に講演者と通訳者の打合せを実施することもあるため、その場合はその日時を伝えておくと良い

 

今回は、フェーズ3および4について説明しました。とくにフェーズ4の基調講演者や招待講演者の選定、招聘準備については、それ以前のフェーズと比べ、多くの時間と労力が要すると考えられますが、一般参加者は基調講演者を見て参加するかどうかを決定することも多々あります。従って、面倒であると感じたとしても、このフェーズで出来るだけきっちり基調講演や招待講演について実施計画を固めて行くことが重要となります。

9月 01 2013

理工系・人文社会系のコンベンションマニュアル(1)

今回から8回のシリーズとして、理工系・人文社会系のコンベンション運営のためのマニュアルについて、簡単に説明したいと思います。前半においては、主催者としての時系列的な業務、後半においては、各種委員長の業務について説明したいと思います。

 

日本政府観光局発行の国際会議マニュアルは、汎用性に富みどのような国際会議でも準備や開催に役立つマニュアルです。特に、初めて国際会議を開催する方々だけではなく、何度も開催されている方にもチェックリスト的に使える有用なマニュアルです。国際会議でどのような組織を編成し、どのように運営し、どのような業務を外部委託すればよいかなど詳細にわたり解説されています。国際会議マニュアルに記載されている事項は、詳細で分かりやすいのですが、今日は、その内容を補足する意味で、特に理工系や人文社会系の国際会議に特化した準備から開催の流れについて説明したいと思います。国際会議を初めて開催される方も、慣れていらっしゃる方も、あるいは国内学会を企画されている方も、本記事を参考にしていただき、あるいは準備や開催のチェックリストとしてお使いくださればと思います。最大公約数的にまとめていますので、省略されている箇所(例えば企業展示の準備など)もありますが、ご了承頂ければと思います。また、フェーズごとに開催の何ヶ月前にする業務なのかを記していますが、イベントの性質や準備状況により変化することもあると思います。飽くまでも目安としてお使いくださればと思います。また、困ったとき、あるいは会議を開催しようとしているが不安で迷っている時には、日本政府観光局のコンベンション相談窓口にご相談されても良いと思います。

 

フェーズ1:立ち上げ時期(36〜12ヶ月前)

・組織作り:大会委員長、実行委員長、財務委員長、広報委員長、出版委員長、実行委員、事務局など。必要に応じて登録委員長、展示委員長など。名誉職的な委員としてではなく、実質的に動いてくれる人を人選したほうがよい。しばしば、「委員長として〜の名前は入れておかないと」ということを耳にするが、実際に働いてくれない場合でも会議の組織の見た目を良くする人を委員長としていれる場合、Program co-chairのように共同委員長扱いすればよい。

・全体の計画作り:この記事のような実施スケジュールを決定

・会議規模の定義:定例の国際会議であれば規模はある程度分かるが、第一回目の開催となる会議は参加者数が見えない場合も多い。希望する規模の2〜5割増しの規模を定義しておくことが望ましい。開催場所や会議場を選定する際にも役立つ。

・開催場所の決定:開催場所の決定には、主催者の勤務地や居住地が選ばれることもあるが、過去に比べてその傾向はなくなりつつあると考えられる。各候補地の視察等を行い、決定することもあるが、開催に名乗りを上げた地域をそのまま開催場所として選ぶこともある。開催場所の決定においては、参加者の満足度を想像しながら選ぶとよい。

・会議場選定、施設の調査:会議場は1つではなく、いくつかを候補に入れておく。バックアッププランを作っておくことで、問題がある際に助かることがある。ただし、施設の予約が完了したら、他の候補は解除する必要がある。会議場の予約開始時期やルールは施設によりことなるので注意が必要。会場の押さえについては、過去の会議日程とおなじ程度か、1〜2日長めに押さえておくことで、後に判明する見込み参加者数が増えた場合でも対応が可能となる。

・その他:国内外の学協会のスポンサー会議である場合、規定に従った運営が必要とされる。例えば、参加費は学協会が集金し、後に実行委員会への振込がある場合と、実行委員会主導で準備・開催し、協賛金を学協会に支払うケースなど様々である。

 

フェーズ2:各所に周知する時期(24〜12ヶ月前)

・1stアナウンス:論文募集および査読がある会議においては、どれだけの論文投稿を得られるかが会議の質を高める鍵になる。他の会議や過去の会議を参考にホームページやフライヤーを作成。この時点で含める必要がある情報としては、会議名、会議場所、日程、論文締切日や申込締切日、査読の有無、組織、会議のテーマ、論文の体裁、査読のプロセス。基調講演・招待講演者が分かっている場合はそれも含める。

・ホームページ作成、フライヤー作成:もし、人的あるいは時間的な制約がある場合は、PCOやホームページ制作会社に依頼することも一つの手であるが、近年簡単にホームページが作成できるコンテンツマネジメントシステム(CMS)などを活用した会議も増えてきている。ワードプレス(Wordpress)などのCMSはフリーで利用できるうえに、ワード感覚でホームページを作成できるので、人気がある。また、フライヤー作成などについては、過去の会議のフライヤーのデザインをアレンジしたり、そのまま用いたりすることで、負担が減らせる。近くで会議開催経験のある人に、フライヤーのテンプレートをもらい、それの内容を企画する会議の内容に変更することで容易に作成してもよい。

・メール広報実施・メールマガジンの配布:過去の会議参加者に会議の情報を送付する。複雑な内容にしてしまったり、何度も送るとかえって逆効果。海外の人に送る際に英語に日本語を並記すると自動的にスパムフィルターに引っかかる。

 

次回は、フェーズ3およびフェーズ4として準備時期に関して説明したいと思います。初めて国際会議を開催する主催者に関して、フェーズ1の立ち上げ時期の初期の部分においてある程度の安心感や成功の確信があれば良いのですが、普通は何をはじめにすれば良いのか、果たして上手くいくのかなどの多くの疑問を持っていることが当然です。しかし、一歩踏み出せば、いくらかの課題が出る反面、心配していたことについて全く気にする必要はなかったことなどにも気づいたりします。なによりも、一歩踏み出すことが重要です。コンベンションビューローとしては、主催者に安心感を持ってもらえるように、ハード面だけではなく、ソフト面、心的面、感覚面でのサポートができれば望ましいです。また、主催者が会議を開催しようと動機をもつようなサポートのノウハウを築けるようになれば望ましいことです。

8月 15 2013

ニーズの拡大によるサービスの拡張

旅行業、ホテル業、そしてMICE業はまさしくサービス(サービス財)を販売する業種であり、一般小売店で物(物財)を販売するのとは、大きく異なる特徴をもちます。たとえば、食品や家具のような目に見える商品は、在庫としてストックすることが可能で、生産から販売および提供まで時間差があります。一方で、サービスに関しては、例えばゴルフについていえば、そのゴルフ場の建設を行ったとしても在庫を蓄えておくことにはなりません。顧客が予約したり、来場したりして料金払うことで初めて商いが成立します。その分、サービスに関わる商品については価格設定が難しく、一律に決定することも不可能です。平成9年の全国物価統計調査において、面白いデータがあります。サービスと比較しながら考えてみましょう。その調査においては1週間の曜日ごとの商品の価格について比較したものです。大型スーパーマーケットや量販専門店について商品の平均販売価格について次のような特徴があります。同じ商品でみて、最も販売価格が高いのが、月曜日や火曜日で、最も商品価格が安くなり、セールなどが行われるのが、週末の金曜日、土曜日および日曜日です。当初はきっと曜日ごとの価格の変化はあまりなかったのでしょうけど、外出する人が多い日をねらって、各店舗が顧客を取り合う競争が起こった故に、週末に価格競争が発生していることを示しています。つまり、月曜日や火曜日に商品価格を安くしたとしても、出歩く人が週末に比べて多くなく、また客単価も高くないため、安売りする必要がないということです。また、月曜日や火曜日に多少商品価格が高くとも、その日にその商品を必要な人は、高い価格でも購入する特徴があるのです。では、サービスに関わる商品の価格はどのようになっているでしょうか?ゴルフ場について見てみましょう。特定サービス業基本調査において、ゴルフのグリーンフィーとテニスのプレイ料金を調査したデータがあります。平成9年でいえば、ゴルフのグリーンフィーは、平日より休日のほうが約1.7倍高いことが知られています。さらに、テニスの2時間のプレイ料金は、平日より休日のほうが1.5倍高いことが知られています。物としての商品と比較すると全く逆の特徴になっています。これは一体どのような理由なのでしょうか?ゴールデンウィーク期間中や夏休み期間中の航空券の価格を想像すれば、理由は自ずと分かりますね。高い航空券でも全く売れない訳ではなく、むしろ需要はかなりあるのです。つまり、閑散期の価格の安い時期に航空券(輸送サービス)を購入するより、多少高くともピーク時に購入する方が、消費者にとって合理的だということです。高い価格の商品を購入することが合理的であるはずがないと疑う方がいらっしゃるかもしれません。しかし、価格だけが購入の意思決定を行う材料となっている訳ではないのです。土日のゴルフやテニスのサービス料金について考えてみます。ここに、事情が異なる2人がいるとしましょう。一人は、主として平日に仕事をしている一般企業の会社員、もう一人は、通常週末や土日に仕事を外せない量販店の社員だとします。まず、後者から考えてみます。量販店の社員は、週末や土日に仕事が入っているため、仕事が休みの日は、平日になります。従って、ゴルフやテニスに関して平日の安い料金でプレイする機会が得られます。これについては、まったく問題はないのですが、問題は前者です。一般企業で働く会社員については、もし、サービスをうける価格だけでみれば、平日に有給休暇などをとり、ゴルフやテニスに行くのが最善な策だといえます。しかし、いつでも平日に休暇をとれるとは限りません。むしろ、日本の企業の体質として、有給休暇を取りにくい状況があります。これは、もし休暇をとれば、業務評価や昇進に関して、何らかのペナルティがあるのではないかというリスクが発生します。あるいは、その休暇を取ったがゆえに、職場に少し居づらくなるなどもあるかもしれません。つまり、サービスをうけることについて、価格のみのうれしさ(効用)だけを見ることができないということです。その安価なサービスを選択すれば、何らかのコストや潜在的リスクが発生することになるということです。人が意思決定をする際に、利得と損失を同時に考えて行動するが故に、平日に休暇をとり、ゴルフに行く人が多くなることはないということですね。

しかし、近年の働き方の多様性やフレキシビリティにより、市場も多少は変化しつつあります。また、ニーズの多様性についても広がりを見せています。下の図は、そのようなニーズの多様性を反映したサービスの設定を示したものです。

ゴルフ場の例については、高い休日料金を払いたくはないが、ゴルフに行きたいというサービス需要者(客)の考えと、土日に従業員を増やしているので、出来るだけ多くの収益をあげたいと考えるサービス提供者(店)の考えがマッチしたことにより、安価プレイ料金でサービスが提供される状況です。一方、居酒屋の例については、就業時間のフレックスタイム制度により、早朝から働き、残業しても午後5時には仕事を終える会社員の考えと、居酒屋の考えがマッチしたことにより、ハッピーアワーを設定することにより安価なサービスが提供される状況です。居酒屋にとっては、その魅力的な料金で客を引きつけるだけではなく、来客を分散させることによりピーク時(7〜9時)の満席状況を緩和することで、多くの客を獲得することにもつながる可能性があります。満席時に、新たにきた客があきらめて帰ってしまえば潜在的な収益を失うことになります。一方、客としても満席やそれに近い状況の場合、快適性や料理などが提供されるスピードが遅くなり、質の低下したサービスを受けることになります。

 

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ニーズの多様性について、旅行業界においても同様です。この十数年流行っているダイナミックパッケージなども、ガイドによる説明が不要だと考える旅行者のニーズです。ホテルについても同様です。ホテルのアメニティグッズについて、不要だと考える客がいるから、アメニティグッズの付かない安価な宿泊プランも売れる訳です。下の図は、大手ホテルチェーンの宿泊価格とブランドのレベルを簡単に示した図です。ホテルには星が付いていないホテルから、5つ星以上のホテルもあるわけですが、客の多様なニーズに対応すべく、図に示すように様々なレベルや性質のホテルがあります。ビジネスでの滞在でも質の高い滞在のニーズがあるから、Marriottが提供する「Fairfield Inn & Suites」や「Residence Inn」などのブランドが存在するのです。また、Wyndham Hotels and Resortsが提供する「Travelodge」や「Super 8」は、睡眠だけとれれば良いと考える宿泊者や、できるだけ安価に滞在したいという旅行者にニーズがあります。参考としてですが、面白いデータがあります。客室数の最大手はInterContinental Hotels Group(英国)、売上高が最も高いのがMarriott International(米国)で、売上高はMarriottが約1兆円規模で、WyndhamはMarriottの3分の1程度なのですが、純利益からすれば、InterContinentalも、MarriottもWyndhamも300億円〜500億円とあまり変わらないようです。

 

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8月 01 2013

新潟MICEセミナーが開催されました

2013年6月17日から18日にかけて、新潟市の朱鷺メッセ(新潟国際会議場)にて、MICEの実務担当者、行政担当者、ホテルや旅館等の観光事業者を対象としたセミナーが開催されました。同時期に開催された国際会議の見学も実施され、座学と体験の両方がセミナーに含まれたため、よりいっそう理解が深まったものと思います。参加者数は45名を超え、各地域のコンベンションビューロー担当者間の交流も促進されたものと思います。セミナーのプログラムは、まず国際応用情報学研究機構の石井直宏会長(愛知工業大学教授、名古屋工業大学名誉教授)による開会挨拶に引き続き、同じ時期に開催された国際会議の開会式見学、私が行った主催者の業務に関する講義、大阪府大の橋本先生のMICEのホスピタリティに関する講義が実施され、その日の夜には国際会議のユニークバンケットの見学が行われました。バンケットは朱鷺メッセよりほど近いピア万代と呼ばれる地元の市場で行われ、まさしくユニークベニューと言える会場でした。会議2日目には、(株)カンファレンスサービスの次郎丸社長によるMICEのサービスと業務支援、および大阪府大の橋本先生による国際会議のIT化による主催者の業務の変化についての講義が行われました。

 

私の講義において注目を集めていたのは、国際会議の誘致において成功した事例および失敗した事例に関連して、なぜ選ばれたのか、なぜ選ばれなかったのかについてです。今回は、同時開催の国際会議について、なぜ新潟が他の都市に勝てたのか、そして主催者の視点で強みと弱みをまとめてお話ししました。会議開催地選定の際に特にインパクトが大きかったのは、市民の市場がバンケットで利用できるという点でした。特に、これまでに国際会議で利用されたことはなかったものの、ピア万代をあげて国際会議での利用の熱意が伝わってきたことが大きかったです。国際会議のバンケットといえばホテルのボールルームで開催されることが多いのですが、市場のテントで地元の厳選された日本酒のドリンクバー、鮪解体ショーと新鮮な鮪料理、それに地域の食材を使ったバーベキューが提供された今回の国際会議バンケットは参加者の満足度も非常に高く、MICEセミナー参加者も勉強になった方々も多かったと思います。

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続いて、大阪府大の橋本先生の講義では、国際会議参加者が期待するホスピタリティとアメニティについてで、特に国際会議に参加する人の特徴については、共感できたかと思います。国際会議の参加者の多くは、会議期間中に講演やディスカッション、聴講したいセッションなどがあり、それをもとにタイムマネジメントをしています。例えば、現地への到着時間の調整や、時差ぼけの解消の工夫など旅行に慣れている人が多いと言えます。また、仕事で参加しているため、他の参加者の交流をはかるために地域のレストランや居酒屋などの利用も多く、一般のツアーなどの旅行者に比べると、機会や時間が金銭よりも優先される傾向があると言えます。また、国際会議参加者は情報発信能力に長けているため、その地域をうまく他の人に伝えることができる人が多いと考えられます。もし、その地域が非常に魅力的に見えれば、関係する人々に地域について宣伝をしてくれると思っても過言ではないと思います。もし、快適ではなく、不便性が多ければ、次のような状況になるでしょう。(Aさん)「来年、X市で開催される国際会議に参加しようと思っているのですけど、Bさんは過去に行かれたことがありますよね」。(Bさん)「行ったらがっかりしますよ。ホテルのスタッフは無礼だし、タクシーは遠回りするし」。

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2日目の朝の講義は、(株)カンファレンスサービスの次郎丸社長の講義でした。この講義では、国際会議の主催者の陥る状況やPCOの支援の姿勢などについてでした。とくに、国際会議の開催場所、テーマ、参加者層、主催者の経験、予算などの様々な要素が毎回同じという訳ではないので、PCOの支援自体もそれぞれの案件に応じたサービス実現手法を考え、常に業務に関する革新をはかって行くことで主催者の満足度が高まる支援が実現するということが印象に残ったという声を頂きました。確かに、ボランティアの人数が違えば、会議の業務のプロセスや内容もそれに合わせたPCOの業務支援を実施した方が望ましいですね。時々、PCOとボランティアのコミュニケーションの失敗や情報共有の失敗による現場の混乱が見られることがありますが、主催者にとっては、高いお金を払ってそのような状況になってしまうと悲しい結末ですね。

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最後の講義として、大阪府大の橋本先生によるIT化がもたらした国際会議主催者の業務の変化について、ソフトの紹介と合わせて説明していただきました。そこでは、一般にコンベンションビューローやホテル等の事業者が知ることのない主催者が利用するツールについて紹介があり、その後、そのソフトを使う上でどのような注意点があるのかについて説明がありました。この講義により、主催者が行う論文募集フェーズの業務、参加受付のフェーズの業務において実際に何をやっているのか、何に気をつけているのかが理解できたものと思います。また、これらのソフトの限界や、そしてソフトを使うことによりかえって手間がかかるかもしれないことについても気づかされたことがあったかと思います。論文投稿管理システムだけでも、国内外で数十以上のシステムが使われていますが、その使いやすさ、使いにくさはそれぞれです。今後、ますます使いやすいシステムが出現することだと思います。

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今後もMICEに関わるセミナーを予定しています。開催予定については別途アナウンスさせていただきます。それに加えて、ビューロー、ホテルなど個別に組織内でのセミナー、賛助会員向けセミナー、主催者セミナー、大学での講義や講演などの依頼も承っております。短い場合ですと、60分のセミナーや半日のセミナー、長い場合でも1日〜2日間のセミナーについても対応できますので、ご要望がありましたらお気軽にご用命ください。特に次のテーマおよびそれ以外にも対応可能ですのでご相談ください。

 

・大きな収益増を期待できるMICEビジネス戦略
・施設の新しい使い方(実際の現場を想定した指導含む)
・MICE誘致と運営の仕方
・国際会議の誘致から申し込み受付、出版、運営、完了まで
・大きな地域活性化を期待できるMICE観光戦略
・MICE高度人材育成の計画と実施
・観光またはMICEに関わる新人研修
・国際会議の誘致から開催までの主催者の業務
・MICE人材育成と組織マネジメント
・新しい地域観光ビジネス戦略~MICEの誘致と業務のポイント~
・MICE高度人材育成の計画と実施
・日本旅館における効果的な国際会議実施運営に関する研究
・郷土色を生かした国際会議誘致・開催にむけて
・観光情報システムとインバウンドへの戦略的広報
・地域を高める観光戦略、ブランディング
・旅行業者のための危機管理とリスク分析
・観光情報に関する訪日旅行者のニーズとプロモーション戦略
・消費形態に見るインバウンドツーリスト獲得戦略
・旅行業界における情報の非対称性と市場の特徴
・その他、個別の相談、指導

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