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4月 15 2014

国際会議・学会主催者業務支援ツールConfVisor (その1)

今回は、国際会議や学会の主催者向けツールConfVisorについて紹介します。本システムは無料で提供されており、国際会議や学会を開催しようとする主催者の業務をガイドするもので、我が国のさらなるMICEの向上を目的として日本政府観光局とTeam ConfVisorと共同開発されたツールです。システムは3種類あり、一つはすでにリリース済であるConfVisor eXpressと、2014年上半期にリリース予定のConfVisor、また2015年にリリースが予定されているConfVisor Proがあります。今回は、序論として、主催者が困っていること、サポートされるべきこと、そしてどのようにシステムによりサポートされるべきかについて説明します。

 

国際会議や学会開催準備に関わる課題と解決のニーズ

近年、アジア諸国をはじめとして多くの国々において、国際学術組織の設立が目立ってきています。その重要なミッションは、国際会議を主催することおよび国際ジャーナルを出版することです。国際会議主催についての実態と、そこでの課題を克服するための支援手法ならびに、支援を実現化するための技術を構築することが望まれます。国際会議は、実行委員長をはじめとして、複数の役割をもつ委員長ならびに下部組織としての各種委員により構成されます。国際学術組織は、国際会議を開催する際、そのような各種委員を大学研究者や企業研究者をはじめとした有識者から適任となる者をリクルーティングし、それぞれの役職に任命します。それぞれの委員長は、任命された委員長業務を果たす必要があり、それらの総体として国際会議イベントが成立します。しかし、多くの任命された委員長は、国際会議イベントの専門化ではありません。役割を果たす際には、自らの経験に基づく場合と、経験者からのアドバイスを得て行う場合、またはそれら2つを組み合わせて運営することが多いと考えられます。自らの経験に基づく場合は、それまでに参加者として参加した国際会議において委員長がどのような仕事をしていたかを想像しながら模倣することで、自らの国際会議業務を遂行します。一方で、経験者からのアドバイスを得て行う場合においては、アドバイスを与える経験者ですら、数多くの国際会議主催経験があることは少なく、経験者がもつ知識の範囲内でのアドバイスとなることが普通となります。自らが想像する業務や経験者が提供する情報が、誤りであった場合ではなくとも、知識や経験が不十分である場合には、国際会議開催において大きなサービスロスが発生することが多く、すなわち、国際会議のステークホルダー(利害関係者)にとっては、望ましくない状況が発生してしまいます。例えば、会議開催のために寄付をしてくれた企業は、寄付金を効果的に使って欲しいと思っているはずですが、主催者の意思決定のミスにより、無駄な出費が発生すれば、寄付者もうれしくはないはずです。

 

国際会議の増加と分野別の割合に基づくConfvisorの意義

世界的に、学術レベルの向上と発展のために、国際会議件数が増加しています。日本政府観光局が掲げる国際会議開催件数増加の重要性を取り上げなくとも、従来型の観光産業に対して、国際会議開催による訪日者数の増加の重要性が近年認識されてきています。近年の為替相場の大きな変動や景気の後退は、観光産業に直接的に大きな影響を与えており、それらの影響を受けにくいタイプのツーリズムの発展が期待されています。その一つとして、これまで優先度が低かった国際会議開催による旅行者の獲得が近年注目をあつめています。下の図は、世界の国際会議開催件数、規模ごとの割合、分野ごとの割合を示したグラフです。2009 年のリーマンショックなどの経済的な影響を受けて、2010 年以降は漸減していますが、この10年で約6割以上の増加となっています。すなわち、国際会議主催者がリクルーティングされている数も増加していると言えます。また、規模ごとの割合を見ると、参加者数が1,000 名以上の国際会議は全体の12%程度であり、約9 割が1,000 名以下の中規模あるいは小規模の国際会議であることがわかります。通常、参加者数が少なければ少ないほど、予算的な制約は強くなり、余分な出費はしにくくなるため、その分各種業務を外注しにくくなる状況になります。図の右のグラフは、分野別の国際会議開催件数を示しています。一般的に、基礎医学、人文科学や社会科学、および工学分野の半数程度は産業界との関連が薄く、寄付金も集まりにくく、予算の使途計画においては、より慎重になる必要が出てきます。大きな会議であればあるほど、企業等のスポンサーも付きやすいため、以上の、規模別の国際会議件数と分野別国際会議開催件数を総合して考慮すれば、開催される全ての国際会議のうち75%以上は、予算制約が厳しく、会議運営の外注が容易ではないといえるでしょう。これらの会議運営上の問題は、国際会議主催者が行う業務を整理し、行うべきことを合理的になるよう整理することで、大きなコストカットが可能となることが少なくありません。

 

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国際会議や学会の業務の整理

日本政府観光局より刊行されている国際会議マニュアルは、一般的な国際会議主催者の会議場選定から準備運営、開催に至るまでの全体を説明した国際会議開催業務のための手引き書です。本国際会議マニュアルは、どの会議においても必要とされる委員の業務が記されており、主催者の助けとなります。とはいっても、会議の性質や規模によっては、必要のない役職や業務も含まれているため、先述に示したような参加者が1,000 名以下の予算制約の強い学術会議においては、日本政府観光局の国際会議マニュアルは十分すぎる情報ですので、以上のような国際会議や学会においては、うまく整理することが望ましいです。整理の基準は、業務の効率化とステークホルダーが得るサービスに焦点を当てるべきです。ConfVisorでは、具体的には、国際会議に関する参加者等へのサービスの価値をベースに主催者が行う業務の順序やタイミングを基準として整理することを試みています。ここでの業務整理の特色は次の2点です。一点目として、文章による記述だけではなく、サブ業務が存在する場合、構造的に明示します。この際に開始から完了までを、大きくメタ業務に基づき分類。例えば、国際会議などにおいては論文の審査のサービスがありますが、そこに内包されるサブ業務は、論文の審査を行う査読者への論文の割当や、審査後の著者への審査結果の通知などがあります。経験の薄い主催者は、論文締切の翌日から審査が始まり、審査方向書の締め切りの翌日を著者への通知日としたりすることが少なくありません。そのようなスケジュールではタイトになりすぎて現実的ではありません。投稿された論文のフォーマットが崩れていたり、あるいはブラインド査読(誰が著者か分からないように名前を消して投稿してもらい、審査をする)であるのに、著者が著者欄に氏名を記入している場合があります。そのような論文は締切後にすぐに査読者に原稿を送付することはできず、著者に修正したものを出してもらう必要があります。従って、論文締切日と査読開始日は、数日あけておくことが望ましいです。また、査読者が期限を忘れていたりすることも多く、期限内に審査結果が全て集まらないことが多いため、審査報告書の提出日と著者への審査結果の通知日についても、数日の余裕を持つことがいいでしょう。二点目として、メインとなる業務を中心に、各種委員長の役割ごとに、会議場選定の時期から完了までを業務流れ図を用いて図示(下の図は、一部分を拡大したもの)します。会議の準備開始から開催までに、すべての委員が一様にすべき業務がある訳ではありません。しかし、ある委員が業務終業後、ほかの委員がその業務の結果を引き継ぎ自らの業務に使うことがあるため、業務流れ図で整理しています。例えば、論文に審査のある国際会議では、審査にパスした著者は国際会議にエントリーするわけですが、審査結果を通知するまでは実行委員長などの業務であり、その後、エントリーされて参加費を支払われたことを確認するのは会計委員長などが行うこともあります。その場合、採択論文リストを会計委員長が入手し、参加費に学生割引などがある場合には、どの論文が学生により執筆されたのかを把握しておく必要があります。ConfVisorでは、この2つを基盤として、国際会議主催者の業務支援を行い、効率的な業務管理を実現しています。また、ConfVisorでは、画面上に業務達成度について、全体の何パーセント達成されたかが表示され、国際会議運営に関する知識を有しない主催者でも、全体的な流れを把握できます。また、主催者がし忘れた業務や遅延があるかどうか、今後直近ですべきことが明示されており、ある業務とその後の業務とのつながりも理解できます。

 

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