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4月 01 2014

MICE実務者向け事例集(2)

本テーマに関する前回の記事(2月15日号)では、国際会議看板の道路設置、コンベンションビューローとPCOの役割、予算のアドバイスなどについて説明しました。しばしば、国際会議主催者とコンベンションビューローには温度差があったり、あるいはある種の誤解が生じることがあります。これは、双方の理解不足や知識不足から起こることですので、スムーズな国際会議準備運営を実現するためには出来る限り早急に解決することが望ましい問題です。特に、主催者から聞かれる声は、コンベンションビューローの職員が国際会議の誘致を働きかけて来て、主催者が尽力して誘致を成功させたのにそれに見合った支援が受けられないという声や、主催者がある種利用されているという誤解があったりするものが含まれています。これを解決するには、経済的な動機ではなく、社会的な動機が存在していることを第一に説明しておく必要があります。例えば、ボランティア活動をしようとしている人に、もっとがんばってくれたら謝礼を支給しますという働きかけは、結果的にボランタリー意識を低下させ、結果的に謝礼を受け取ることが目的化します。その結果、途中からは謝礼に見合わない活動だと判断すればボランティア活動が行われなくなります。一方で、ボランティア活動をしている人に、もっとがんばってくれたら今後の活動がより円滑に実施可能となるように機材の提供や情報の提供を行うことを約束すれば、より効果的にボランティア活動は促進されます。支援側として、同じだけのコストをかけるにしても、前者と後者はボランティア活動を実施する人には大きく意味合いが異なります。すなわち、市場規範や経済的動機を持込むのではなく、社会規範や社会的意義に基づく動機を持込む方が、活動はより効果的になります。

さて、今回はMICE実務者向けの事例として次の2点について、考えたいと思います。一つ目は、物理的制約に関する事柄です。会議を開催する際に、どうしても開催を円滑にする空間、すなわち会議室や準備室が必要となります。二つ目は、インターネット接続に関する要望です。インターネット環境は参加者にとっては、快適に会議に参加するためには近年重要な要素になって来ています。

 

1.主催者が会議当日にどうしても追加で会議室を1部屋準備して欲しいと要望してきました。しかし、空き部屋はありません。どう対処しますか?

もっとも重要なことは、準備を要望している部屋は何に利用されるのかを聞くことです。一般的に、施設側からすれば、部屋の利用に関することについて、施設の利用規程に違反しない限り、主催者任せであり、申請があれば利用を許可し、申請がなければ利用を許可しないというシンプルなものです。しかし、国際会議やコンベンション実施においては、単純に午後にミーティングを実施するので一部屋貸して欲しいという申請とは同一ではないと認識すべきです。なぜならば、国際会議などのイベントの場合、その一室があるかないかによって、会議の成功不成功に関わることが多いからです。会議が成功すれば、今後もコンベンションを実施してくれる潜在的な機会が得られますし、参加者にとっては、その地域への印象がより良くなることにもつながり、観光のさらなる振興とも関連があります。従って、会議室の空き部屋がない場合でも、それがどうしても必要である場合は、なんとかして代替的な策を講じることが望ましいわけです。欧米のホテルにおいては、金銭的な恩恵だけではなく、それ以外の部分にも目を向けて総合的にプラスになる場合は、出来る限りフレキシブルに対応することが多いのですが、我が国においては、ルールはルール、あるいは契約以上のことはしないというような考えに基づいた考えがしばしば見られることは否定できません。物理的に会議室を準備できない場合は、その利用の内容や目的を聞くことで簡単に解決できることもあります。例えば、急遽会議室が必要となるケースは次のようなことが考えられます。国際会議主催者の役員会を実施する、VIPの控え室や急病人のための休憩スペースが急遽必要になる、国際会議の運営に関わる機材を保管する、追加的な分科会が急遽実施される、などです。例えば、国際会議主催者の役員会の場合、1〜2時間程度の利用となる場合が多いと考えられますので、特別に施設の業務用のミーティングスペースを使ってもらうなどが考えられます。VIPの控え室などについては、特段豪華である必要がない場合は、国際会議受付デスクの後方のスペースなどが利用できる場合は、机と椅子およびパーティションを何枚か準備して、プライベートスペースをつくるなどが考えられます。国際会議運営に関わる機材の保管については、特にセキュリティの問題がない場合は、上記のVIP控え室のようにスペースを確保したり、分科会場で比較的広めの部屋の後方にパーティションで囲んだスペースをつくるなどがあります。追加的な分科会場が必要な場合は、最も難しいことですが、私が過去に見た事例では、国際会議施設のレストラン内のスペースを使って急遽設置されたケースがありました。

 

2.会議開催中に主催者が会議場のインターネットのスピードが遅いと怒りはじめています。どう対処しますか? 

国際会議主催者は、たとえインターネットのスピードが遅くなったり、接続が不安定になったりするだけでも、神経質になりやすいものです。一方で、参加者にとってはそのような状況においては、メールの返信や地図の確認など特に必要とする情報収集や通信を選んで行うようになります。従って、主催者が思っている以上に深刻な状況ではないことが多い訳なのですが、状況を改善することは望ましいことであります。状況によっては簡単に解決できることもありますので、インターネットのスピードが遅い理由を知ることが重要です。その理由としては次のことが考えられます。施設の無線インターネットの機器が許容できる以上の接続数がある、そもそも施設が契約しているインターネットの回線が細い、無線インターネットの電波が干渉し合っているなどです。まず、無線インターネットの機器の許容できる以上の接続数があるというのは、無線インターネットのアクセスポイントの機器の上限接続数が20ユーザであるなどの場合、それ以上のユーザが接続しようとしている場合には、接続が上手くいかないことがあります。一番の問題は、おそらく機器が古いこと、あるいはインターネットの接続に関わる設計が上手くいっていないことが考えられます。そのような課題を知っている場合、アクセスポイントの機器の交換が考えられるのですが、予算の関係上もあり、即効性はありません。また、無線LANの機器を増やすことで解決する場合は、同時に通信スピードが遅くなってしまうことが考えられます。水道管に蛇口をたくさん付ければ供給先は増えるのですが、水圧が弱くなるのとおなじです。この類いの問題の最も手っ取り早い解決方法は、ユーザからの必要外の接続を抑制することが考えられます。ネットワーク管理ソフトなどを用いて管理する方法があります。例えば、ネットワークに接続するには、IDとパスワードが必要になるようにしておき、そのIDとパスワードは30分あるいは1時間のみ利用が可能となるように設定することで、不要な接続を減らすことが考えられます。電波が干渉している場合は、干渉している機器の周波数のチャンネルを変えるなどの解決法があります。施設内の無線LANプリンタなどが影響していることもありますので、調査を行ってみることが望ましいです。

 

今回は、会議施設のスペースとインターネットの問題について取り上げました。今後、定期的にこのような施設の問題や改善のヒントに関係する話題を取り上げて行きたいとおもいます。なによりも、できないことはできないという考えではなく、柔軟で変化可能であるという考えに立ったマネジメントが必要となります。その結果、施設のファンが増え、地域のファンが増え、結果的に地域の経済的な効果だけではなく、文化的・社会的波及効果へとつながり、コンベンションがより開催しやすい地域になっていきます。