5月 15 2014

サービスに関わるいくつかの法則(1)

コンベンションの誘致や開催の経験を積めば、ある意味勘が養われ、どのようなタイプの主催者には、どのような視察プログラムを組めばいいか、どのような会議には、どのようなアトラクションの演出を提供すれば効果があるかなど分かってきます。単に経験だけではなく、相手の心をより理解しようとすればその勘もより養われて行くことはいうまでもありません。しかし、コンベンション誘致や、開催の運営方法において、場当たり的な意思決定を行ってしまうとしばしば大きな失敗を招くことがあります。これは、商売において消費者の行動の法則を理解しないことに起因するのと同じであり、経済学や経営学、また心理学等のあらゆる知識を得ていれば回避できることもしばしばです。今日から、3回のシリーズで人間の行動に関わるいくつかの法則を紹介し、コンベンション誘致力、開催力をアップできるキーワードや実例について紹介します。

 

(1)損失回避の法則

ヨーロッパ大手の航空会社KLMで実際に起こった事例を紹介します。KLMのベテランパイロットが起こした史上最悪の飛行機事故があります。その日、ヨーロッパのある空港でテロ騒ぎがあり、航行中の全ての飛行機が最寄りの空港に着陸待機するように指令があり、そのベテランパイロットも最寄りの空港に着陸し、待機していました。その時間を有効に活用し、またこの待機により、後に発生するだろう遅延をできるだけ避けるために待機中に給油をすることにしました。すると、しばらくして霧が出始めて、もしかしたらこのまま旅行客と一晩を空港で過ごし、損失を招くかもしれないと頭をよぎりました。そこで、給油が終わったところで、まだこの状態なら離陸が可能だとベテラン機長は判断し、管制官の指示を振り切り滑走路への飛行機を動かし、離陸の準備に入りました。もうこのときには十分に霧が濃くなり、視界が悪い状態でした。しかし、機長は自らの判断に間違いはないと信じて、スロットルレバーを操作し、エンジン出力を最大にしました。そのまま、離陸できれば良かったのですが、滑走路の途中で立ち往生をしているパンナム機を発見し、もうそのときには泊まれないスピードになっていました。機長はなんとか離陸しようとし、この飛行機の機首は一見パンナム機の上を通過したように見えましたが、機体の傾きが大きかったため、胴体下部が接触しました。このKLM機は、先ほど燃料を満タンにしたばかりで、墜落した後、乗客は全員死亡してしまう大惨事となりました。このように、経験により判断した結果が、最悪の結末を迎えることになるのです。もし、機長が燃料を満タンにしていなかったら、機体は軽く接触しなかったかもしれません。または、経験上、霧が濃くなると予想したのですが、そうはならなかったかもしれません。このような、人間の行動を「損失回避の法則」と言います。小さな損失を何としてでも避けようとすることにより、大きな損害の可能性を見落としてしまうこともあるのです。それは、経験が邪魔をすることがおおく、成功体験が被害想定を邪魔してしまうということです。同様の例は身近にあります。例えば、交通違反の際に、おとなしく捕まれば、反則金で済むのに、逃走しカーチェイスの末に、ひき逃げや当て逃げ、信号無視等を繰り返し取り返しのつかない状況を作ってしまうというニュースを時々聞きます。これは、人間が、何かを得るよりも、失う方の痛みを強く感じるという性質を持つからです。その損失リスクを回避できるなら多少の犠牲を払うことを躊躇しなくなる訳です。さらに、途中失敗があっても、それを取り戻そうとします。つまり、損失が大きくなればなるほどそれを嫌うということです。しかし、それを回避するためにしばしば不合理な行動をとってしまうのが、損失回避の法則です。例えば、観光業界でもあります。旅行のピークの時期に、旅館やホテルのシェフがやめてしまい、料理がいつも通りに出せない状況でも、一旦受けた予約をホテル側からキャンセルすることはしない、すなわち、失う痛みを感じていて、その結果、衛生状態が悪くなったり、未熟なシェフを雇ったりして食中毒などの被害を出してしまうというような例です。また、それを隠蔽しようとして、結果的に大きな損失を被るという悪循環に陥る例は、考えられることです。携帯電話の契約でも同じで、従量制と使い放題の2つのプランがあるときに、多くの人が使い放題のプランを契約するのも損失回避の法則から来ています。もしかしたら使いすぎるかもしれない、その場合多額の利用料になってしまうと頭をよぎると、一年間で数回しか使い過ぎがなく、トータルの支払額で計算すると、使い放題プランのほうが高く付くことを気づかないようになります。まあ、そういう私も使い放題を選んでますが。

 

(2)損得の心理

しばしば消費者の行動は理解ができないことがあります。こういう話があります。スーパーマーケットのたまごの価格の例ですが、いつもは一パックの卵が200円で売られているとします。そのときの消費者の損得に関する行動を考えてみましょう。一つは、安売りセールで、1割引になった場合の購入量と、もう一つは、需要増(または供給減)のため、1割高くなった場合の購入量です。前者の時に購入者がいつもの卵の価格200円のときより、1割増えたとします。そう考えれば、後者については、購入者はいつもの1割減または同程度の減少と推測しがちですが、結果は、3割も4割も購入者が減ることがわかっています。これは、得をするより、失う方が痛みを余計に感じることに起因する消費者の行動です。消費者の行動だけではありません。宝くじで、番号を6つ当てるくじがありますが、このくじを実際には買わずに、遊びで友人とお互いに当選番号を予想するゲームを下とします。アメリカの「メガミリオンズ」という宝くじなら本当に買っていたら、一等賞金は100億円以上も珍しくはありません。心の中では、どうせ当たらないので、買わないと思って友人とゲームをしていた数字が、もし的中したらどうでしょう。なんか100億円損をしてしまう気分になってしまうのではないでしょうか?損得の心理について、航空券の例を挙げましょう。昨今、激安航空会社(LCC:Low Cost Carrirers)が注目を集めていますが、果たしてそれを選ぶのが本当に得なのでしょうか?安易に得だと考えてしまえば大きな落とし穴が待ち受けています。しばしば、LCCが欠航になってクレームをつけている人がいますが、当然LCCは規定どおりの対応しかしません。欠航したときだけではなく、通常時にもLCCには多数の制約があります。そのいくつかを挙げますと、(1)予約は原則ウェブサイトで行う(電話だと有料)、(2)空港が離れた場所にある、(3)空港のチケッティングカウンターは離れた場所にある、(4)搭乗券をプリントアウトし忘れたらカウンターで有料発行、(5)預け荷物は原則有料、(6)搭乗口も離れた場所にある、(7)待ち時間が長い、(8)キャンセル時でも振替便やホテル代は出ない、(9)機内のシートピッチが狭い、(10)清潔さ、クルーのレベルにより精神的ダメージが大きい、(11)機内サービスは有料、(12)ビジネス/ファーストクラスラウンジが存在しないなどです。それを、欠航率や遅延率を考慮してレガシーキャリアと金額で換算した比較を行うと、なんとレガシーキャリアのほうがお得だったりすることもあります。時間が十分に使える学生などは、LCCはトータルで得が多いこともありますが、忙しい時間を割いて旅行をしたり、出張をしたりする人にとっては、LCCに乗るたびに1万円以上を潜在的に失う結果が簡単な計算で確認できます。例えば、LCCの遅延率は30%またはそれ以上でも珍しくないのに対して、日本のレガシーキャリアの遅延率は5%前後です。年に20回搭乗すると考えて、LCCだと6回、レガシーキャリアだと1回遅延していることになります。そこで金額換算して考える際の要素は、(1)遅れた時間分の労働の対価(時給いくらか)、(2)遅れた便が深夜便の場合で、終電が終わっていた場合に、タクシーを使ったり、朝までターミナルで待ったりするときのコストなどがあります。また、狭い機内での精神的苦痛(腰を痛めた場合の薬代)なども考えれば、結局レガシーキャリアのほうが得な場合もあるのです。一見して、トータルとして、チケットの価格差は2倍かそれ以上あるかもしれませんが、金額で示されると具体的であり、印象にのこります。それが、旅行者に対して、目先の損得に執着してしまい、差額には何が含まれているかを考慮させず、LCCを選ばせる要因になるのです。

5月 01 2014

国際会議・学会主催者業務支援ツールConfVisor (その2)

前回は、国際会議や学会の主催者向けツールConfVisor開発の背景について説明しました。ConfVisorは無料で提供されている国際会議や学会の主催者業務をガイドするツールであり、日本における国際会議開催件数を増加させるべく日本政府観光局とTeam ConfVisorの共同で開発をすすめているシステムです。システムは3種類あり、一つはすでにリリース済であるConfVisor eXpressと、2014年上半期にリリース予定のConfVisor、また2015年にリリースが予定されているConfVisor Proがあります。今回は、ConfVisorのシステムの概要や機能について説明します。

 

システムの概要

国際会議主催者は、実行委員長が決定した時点を国際会議準備の開始であるとした場合、国際会議が完了するまでに、幅はあるが6〜36ヶ月の間、国際会議準備業務を行うことになります。その間に、実施する業務が抜ける、あるいは順序に関してミスをした場合、結果的にステークホルダー(利害関係者)へのサービスへと影響をきたします。そこで、ConfVisorでは、時期に応じて実施する業務を提示します(ConfVisor eXpressには本機能は含まれておりません)。もし、主催者がある業務の実施を忘れていた場合、より会議が成功に近づくように、その業務遂行時期を適切な順序で提示します。ミスコミュニケーションによる事業失敗や業務実施忘れなどを回避するために、統括委員長は、全ての委員業務をモニタリングできます。広報委員長や出版委員長などの各担当委員には、自らの業務に専念できるように、役割範囲外の業務は提示しません。なお、現在提供中のConfVisor eXpressにおいては、業務モニタリングやマネジメント機能は付属しておりませんが、国際会議主催者が活用できる各種テンプレートの他、誘致後の業務から国際会議実施・完了にいたる一連の業務とその進め方についての情報が提供されております。ConfVisorとConfVisor eXpressの違いについては、下の図をご覧ください。

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システムが提供するサービス

下の図に示す通り、ConfVisorは業務の項目だけではなく、それぞれの業務を実施するための手順も説明しています。例えば、国際会議プログラムの作成手順やそのサンプル、そして予算書などの各種テンプレートを提供します。国際会議や学会の主催経験が浅い主催者の声として、どうしても各種書類の書式などが分からないということが聞かれますが、ConfVisorでは国際会議において必要とされる標準的なテンプレートを配布しており、予算書や決算書などにおいては、地域の補助金などを得る際にそのままその書式を利用可能なことが多いです。

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ConfVisorの位置づけ

ConfVisorは、特に中規模〜小規模の学術国際会議や学会に絞った主催者支援ツールです。会議併設の展示会やその他の総論的な説明については、日本政府観光局が刊行している国際会議主催者マニュアルと重複してしまいますので、その情報は提供しておりません。一方で、国際会議主催者マニュアルにおいては、論文の査読や出版のフェーズ、その他学術国際会議特有の業務については取り扱っていない項目もありますので、ConfVisorと日本政府観光局の国際会議主催者マニュアルを補完的に活用することで、国際会議や学会がより成功に近くなると言えます。

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ConfVisor eXpress

本システムは、ポータル画面からユーザ登録することにより開始されます。ユーザ登録においては、形式的な審査がありますが、通常国際会議主催者や学会の事務局の場合、数日で利用許可が出されます(利用開始のメールがスパムフィルターにかかる場合もありますので、そちらも確認してください)。国際会議経験が豊富なホテルや旅行会社およびPCOにつきましては、別途支援プログラムを準備しておりますのでそちらをご活用ください。ConfVisor eXpress利用開始のメールを受け取ったあとから、指定したIDとパスワードでConfVisor eXpressにログインが可能となります。ログイン後は、下に示す図の通り、誘致後から会議開催・完了時までの一連の業務が列挙されており、そこに付けられたリンクをクリックすると業務の具体的な内容や手順、注意点についての説明を見ることができます。また、先に説明した通り、各種サンプルやテンプレートを入手可能となっております。

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現在、主催者業務のガイドConfVisor eXpressのみが運用中ですが、主催者業務を管理するConfVisorも近々利用可能となります。ConfVisorの具体的な機能や利用法については、利用開始時に説明する予定です。お楽しみにお待ちください。

4月 15 2014

国際会議・学会主催者業務支援ツールConfVisor (その1)

今回は、国際会議や学会の主催者向けツールConfVisorについて紹介します。本システムは無料で提供されており、国際会議や学会を開催しようとする主催者の業務をガイドするもので、我が国のさらなるMICEの向上を目的として日本政府観光局とTeam ConfVisorと共同開発されたツールです。システムは3種類あり、一つはすでにリリース済であるConfVisor eXpressと、2014年上半期にリリース予定のConfVisor、また2015年にリリースが予定されているConfVisor Proがあります。今回は、序論として、主催者が困っていること、サポートされるべきこと、そしてどのようにシステムによりサポートされるべきかについて説明します。

 

国際会議や学会開催準備に関わる課題と解決のニーズ

近年、アジア諸国をはじめとして多くの国々において、国際学術組織の設立が目立ってきています。その重要なミッションは、国際会議を主催することおよび国際ジャーナルを出版することです。国際会議主催についての実態と、そこでの課題を克服するための支援手法ならびに、支援を実現化するための技術を構築することが望まれます。国際会議は、実行委員長をはじめとして、複数の役割をもつ委員長ならびに下部組織としての各種委員により構成されます。国際学術組織は、国際会議を開催する際、そのような各種委員を大学研究者や企業研究者をはじめとした有識者から適任となる者をリクルーティングし、それぞれの役職に任命します。それぞれの委員長は、任命された委員長業務を果たす必要があり、それらの総体として国際会議イベントが成立します。しかし、多くの任命された委員長は、国際会議イベントの専門化ではありません。役割を果たす際には、自らの経験に基づく場合と、経験者からのアドバイスを得て行う場合、またはそれら2つを組み合わせて運営することが多いと考えられます。自らの経験に基づく場合は、それまでに参加者として参加した国際会議において委員長がどのような仕事をしていたかを想像しながら模倣することで、自らの国際会議業務を遂行します。一方で、経験者からのアドバイスを得て行う場合においては、アドバイスを与える経験者ですら、数多くの国際会議主催経験があることは少なく、経験者がもつ知識の範囲内でのアドバイスとなることが普通となります。自らが想像する業務や経験者が提供する情報が、誤りであった場合ではなくとも、知識や経験が不十分である場合には、国際会議開催において大きなサービスロスが発生することが多く、すなわち、国際会議のステークホルダー(利害関係者)にとっては、望ましくない状況が発生してしまいます。例えば、会議開催のために寄付をしてくれた企業は、寄付金を効果的に使って欲しいと思っているはずですが、主催者の意思決定のミスにより、無駄な出費が発生すれば、寄付者もうれしくはないはずです。

 

国際会議の増加と分野別の割合に基づくConfvisorの意義

世界的に、学術レベルの向上と発展のために、国際会議件数が増加しています。日本政府観光局が掲げる国際会議開催件数増加の重要性を取り上げなくとも、従来型の観光産業に対して、国際会議開催による訪日者数の増加の重要性が近年認識されてきています。近年の為替相場の大きな変動や景気の後退は、観光産業に直接的に大きな影響を与えており、それらの影響を受けにくいタイプのツーリズムの発展が期待されています。その一つとして、これまで優先度が低かった国際会議開催による旅行者の獲得が近年注目をあつめています。下の図は、世界の国際会議開催件数、規模ごとの割合、分野ごとの割合を示したグラフです。2009 年のリーマンショックなどの経済的な影響を受けて、2010 年以降は漸減していますが、この10年で約6割以上の増加となっています。すなわち、国際会議主催者がリクルーティングされている数も増加していると言えます。また、規模ごとの割合を見ると、参加者数が1,000 名以上の国際会議は全体の12%程度であり、約9 割が1,000 名以下の中規模あるいは小規模の国際会議であることがわかります。通常、参加者数が少なければ少ないほど、予算的な制約は強くなり、余分な出費はしにくくなるため、その分各種業務を外注しにくくなる状況になります。図の右のグラフは、分野別の国際会議開催件数を示しています。一般的に、基礎医学、人文科学や社会科学、および工学分野の半数程度は産業界との関連が薄く、寄付金も集まりにくく、予算の使途計画においては、より慎重になる必要が出てきます。大きな会議であればあるほど、企業等のスポンサーも付きやすいため、以上の、規模別の国際会議件数と分野別国際会議開催件数を総合して考慮すれば、開催される全ての国際会議のうち75%以上は、予算制約が厳しく、会議運営の外注が容易ではないといえるでしょう。これらの会議運営上の問題は、国際会議主催者が行う業務を整理し、行うべきことを合理的になるよう整理することで、大きなコストカットが可能となることが少なくありません。

 

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国際会議や学会の業務の整理

日本政府観光局より刊行されている国際会議マニュアルは、一般的な国際会議主催者の会議場選定から準備運営、開催に至るまでの全体を説明した国際会議開催業務のための手引き書です。本国際会議マニュアルは、どの会議においても必要とされる委員の業務が記されており、主催者の助けとなります。とはいっても、会議の性質や規模によっては、必要のない役職や業務も含まれているため、先述に示したような参加者が1,000 名以下の予算制約の強い学術会議においては、日本政府観光局の国際会議マニュアルは十分すぎる情報ですので、以上のような国際会議や学会においては、うまく整理することが望ましいです。整理の基準は、業務の効率化とステークホルダーが得るサービスに焦点を当てるべきです。ConfVisorでは、具体的には、国際会議に関する参加者等へのサービスの価値をベースに主催者が行う業務の順序やタイミングを基準として整理することを試みています。ここでの業務整理の特色は次の2点です。一点目として、文章による記述だけではなく、サブ業務が存在する場合、構造的に明示します。この際に開始から完了までを、大きくメタ業務に基づき分類。例えば、国際会議などにおいては論文の審査のサービスがありますが、そこに内包されるサブ業務は、論文の審査を行う査読者への論文の割当や、審査後の著者への審査結果の通知などがあります。経験の薄い主催者は、論文締切の翌日から審査が始まり、審査方向書の締め切りの翌日を著者への通知日としたりすることが少なくありません。そのようなスケジュールではタイトになりすぎて現実的ではありません。投稿された論文のフォーマットが崩れていたり、あるいはブラインド査読(誰が著者か分からないように名前を消して投稿してもらい、審査をする)であるのに、著者が著者欄に氏名を記入している場合があります。そのような論文は締切後にすぐに査読者に原稿を送付することはできず、著者に修正したものを出してもらう必要があります。従って、論文締切日と査読開始日は、数日あけておくことが望ましいです。また、査読者が期限を忘れていたりすることも多く、期限内に審査結果が全て集まらないことが多いため、審査報告書の提出日と著者への審査結果の通知日についても、数日の余裕を持つことがいいでしょう。二点目として、メインとなる業務を中心に、各種委員長の役割ごとに、会議場選定の時期から完了までを業務流れ図を用いて図示(下の図は、一部分を拡大したもの)します。会議の準備開始から開催までに、すべての委員が一様にすべき業務がある訳ではありません。しかし、ある委員が業務終業後、ほかの委員がその業務の結果を引き継ぎ自らの業務に使うことがあるため、業務流れ図で整理しています。例えば、論文に審査のある国際会議では、審査にパスした著者は国際会議にエントリーするわけですが、審査結果を通知するまでは実行委員長などの業務であり、その後、エントリーされて参加費を支払われたことを確認するのは会計委員長などが行うこともあります。その場合、採択論文リストを会計委員長が入手し、参加費に学生割引などがある場合には、どの論文が学生により執筆されたのかを把握しておく必要があります。ConfVisorでは、この2つを基盤として、国際会議主催者の業務支援を行い、効率的な業務管理を実現しています。また、ConfVisorでは、画面上に業務達成度について、全体の何パーセント達成されたかが表示され、国際会議運営に関する知識を有しない主催者でも、全体的な流れを把握できます。また、主催者がし忘れた業務や遅延があるかどうか、今後直近ですべきことが明示されており、ある業務とその後の業務とのつながりも理解できます。

 

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4月 01 2014

MICE実務者向け事例集(2)

本テーマに関する前回の記事(2月15日号)では、国際会議看板の道路設置、コンベンションビューローとPCOの役割、予算のアドバイスなどについて説明しました。しばしば、国際会議主催者とコンベンションビューローには温度差があったり、あるいはある種の誤解が生じることがあります。これは、双方の理解不足や知識不足から起こることですので、スムーズな国際会議準備運営を実現するためには出来る限り早急に解決することが望ましい問題です。特に、主催者から聞かれる声は、コンベンションビューローの職員が国際会議の誘致を働きかけて来て、主催者が尽力して誘致を成功させたのにそれに見合った支援が受けられないという声や、主催者がある種利用されているという誤解があったりするものが含まれています。これを解決するには、経済的な動機ではなく、社会的な動機が存在していることを第一に説明しておく必要があります。例えば、ボランティア活動をしようとしている人に、もっとがんばってくれたら謝礼を支給しますという働きかけは、結果的にボランタリー意識を低下させ、結果的に謝礼を受け取ることが目的化します。その結果、途中からは謝礼に見合わない活動だと判断すればボランティア活動が行われなくなります。一方で、ボランティア活動をしている人に、もっとがんばってくれたら今後の活動がより円滑に実施可能となるように機材の提供や情報の提供を行うことを約束すれば、より効果的にボランティア活動は促進されます。支援側として、同じだけのコストをかけるにしても、前者と後者はボランティア活動を実施する人には大きく意味合いが異なります。すなわち、市場規範や経済的動機を持込むのではなく、社会規範や社会的意義に基づく動機を持込む方が、活動はより効果的になります。

さて、今回はMICE実務者向けの事例として次の2点について、考えたいと思います。一つ目は、物理的制約に関する事柄です。会議を開催する際に、どうしても開催を円滑にする空間、すなわち会議室や準備室が必要となります。二つ目は、インターネット接続に関する要望です。インターネット環境は参加者にとっては、快適に会議に参加するためには近年重要な要素になって来ています。

 

1.主催者が会議当日にどうしても追加で会議室を1部屋準備して欲しいと要望してきました。しかし、空き部屋はありません。どう対処しますか?

もっとも重要なことは、準備を要望している部屋は何に利用されるのかを聞くことです。一般的に、施設側からすれば、部屋の利用に関することについて、施設の利用規程に違反しない限り、主催者任せであり、申請があれば利用を許可し、申請がなければ利用を許可しないというシンプルなものです。しかし、国際会議やコンベンション実施においては、単純に午後にミーティングを実施するので一部屋貸して欲しいという申請とは同一ではないと認識すべきです。なぜならば、国際会議などのイベントの場合、その一室があるかないかによって、会議の成功不成功に関わることが多いからです。会議が成功すれば、今後もコンベンションを実施してくれる潜在的な機会が得られますし、参加者にとっては、その地域への印象がより良くなることにもつながり、観光のさらなる振興とも関連があります。従って、会議室の空き部屋がない場合でも、それがどうしても必要である場合は、なんとかして代替的な策を講じることが望ましいわけです。欧米のホテルにおいては、金銭的な恩恵だけではなく、それ以外の部分にも目を向けて総合的にプラスになる場合は、出来る限りフレキシブルに対応することが多いのですが、我が国においては、ルールはルール、あるいは契約以上のことはしないというような考えに基づいた考えがしばしば見られることは否定できません。物理的に会議室を準備できない場合は、その利用の内容や目的を聞くことで簡単に解決できることもあります。例えば、急遽会議室が必要となるケースは次のようなことが考えられます。国際会議主催者の役員会を実施する、VIPの控え室や急病人のための休憩スペースが急遽必要になる、国際会議の運営に関わる機材を保管する、追加的な分科会が急遽実施される、などです。例えば、国際会議主催者の役員会の場合、1〜2時間程度の利用となる場合が多いと考えられますので、特別に施設の業務用のミーティングスペースを使ってもらうなどが考えられます。VIPの控え室などについては、特段豪華である必要がない場合は、国際会議受付デスクの後方のスペースなどが利用できる場合は、机と椅子およびパーティションを何枚か準備して、プライベートスペースをつくるなどが考えられます。国際会議運営に関わる機材の保管については、特にセキュリティの問題がない場合は、上記のVIP控え室のようにスペースを確保したり、分科会場で比較的広めの部屋の後方にパーティションで囲んだスペースをつくるなどがあります。追加的な分科会場が必要な場合は、最も難しいことですが、私が過去に見た事例では、国際会議施設のレストラン内のスペースを使って急遽設置されたケースがありました。

 

2.会議開催中に主催者が会議場のインターネットのスピードが遅いと怒りはじめています。どう対処しますか? 

国際会議主催者は、たとえインターネットのスピードが遅くなったり、接続が不安定になったりするだけでも、神経質になりやすいものです。一方で、参加者にとってはそのような状況においては、メールの返信や地図の確認など特に必要とする情報収集や通信を選んで行うようになります。従って、主催者が思っている以上に深刻な状況ではないことが多い訳なのですが、状況を改善することは望ましいことであります。状況によっては簡単に解決できることもありますので、インターネットのスピードが遅い理由を知ることが重要です。その理由としては次のことが考えられます。施設の無線インターネットの機器が許容できる以上の接続数がある、そもそも施設が契約しているインターネットの回線が細い、無線インターネットの電波が干渉し合っているなどです。まず、無線インターネットの機器の許容できる以上の接続数があるというのは、無線インターネットのアクセスポイントの機器の上限接続数が20ユーザであるなどの場合、それ以上のユーザが接続しようとしている場合には、接続が上手くいかないことがあります。一番の問題は、おそらく機器が古いこと、あるいはインターネットの接続に関わる設計が上手くいっていないことが考えられます。そのような課題を知っている場合、アクセスポイントの機器の交換が考えられるのですが、予算の関係上もあり、即効性はありません。また、無線LANの機器を増やすことで解決する場合は、同時に通信スピードが遅くなってしまうことが考えられます。水道管に蛇口をたくさん付ければ供給先は増えるのですが、水圧が弱くなるのとおなじです。この類いの問題の最も手っ取り早い解決方法は、ユーザからの必要外の接続を抑制することが考えられます。ネットワーク管理ソフトなどを用いて管理する方法があります。例えば、ネットワークに接続するには、IDとパスワードが必要になるようにしておき、そのIDとパスワードは30分あるいは1時間のみ利用が可能となるように設定することで、不要な接続を減らすことが考えられます。電波が干渉している場合は、干渉している機器の周波数のチャンネルを変えるなどの解決法があります。施設内の無線LANプリンタなどが影響していることもありますので、調査を行ってみることが望ましいです。

 

今回は、会議施設のスペースとインターネットの問題について取り上げました。今後、定期的にこのような施設の問題や改善のヒントに関係する話題を取り上げて行きたいとおもいます。なによりも、できないことはできないという考えではなく、柔軟で変化可能であるという考えに立ったマネジメントが必要となります。その結果、施設のファンが増え、地域のファンが増え、結果的に地域の経済的な効果だけではなく、文化的・社会的波及効果へとつながり、コンベンションがより開催しやすい地域になっていきます。

3月 15 2014

ラスベガスコンベンション施設視察レポート(写真集)

2015年に米国ラスベガスで開催予定の国際会議のために、ホテルの視察を行いました。2014年は、Caesars Entertainmentグループの一つHarrahs Las Vegasホテルで開催予定ですが、その翌年にも、別の国際会議を実施予定です。候補となるホテルは複数ありますが、そのうちFlamingo Las VegasとParis Las Vegasの2つのホテルが有力候補となっています。今回は、その2つのホテルの視察レポートです。会議はホテルのコンベンション施設を利用して実施する予定で、会期は3日間、参加者数の予定は200名です。ラスベガスは、5月から7月はコンベンション開催が少なく、この時期の開催だと主催者の交渉権が強くなります。会議レセプションはホテル内のユニークベニューを利用して行う予定です。日本の誘致活動や施設、サービス等と比較してご覧いただければ幸いです。

 

まず、Caesars Entertainmentに連絡したところ、こちらの指定したスケジュールでの視察を組んでもらえました。まず、Flamingo LVを視察しようと思ったところ、宿泊しているホテルにリムジンで迎えに来ました。この時点で、日本とは大きく違うところです。少しでもビジネスチャンスがあれば、がっちりと誘致が成功するように心がけています。それぞれ宿泊施設、会議場エリアの視察でしたが、どのホテルもかなりやる気があります。
 

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リムジン1台目(宿泊しているホテルから Flamingo LVへの移動)

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リムジン1台目内部

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Flamingo LVの客室の説明を受ける

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Flamingo LV の Go Room Deluxe

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客室からの風景(他にもベラッジオの噴水が見えるStrip view roomがある)

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Flamingo LVの会議場ホワイエエリア(他のイベントと混乱しないように配慮してもらえる)

P1010319Flamingo LVの分科会場(レセプションやバンケットにも利用できる)
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Flamingo LVの会議バンケット/レセプションエリア(ここにケータリングして実施)

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会議ホテルの裏口(新しく新設され、利便性が増している。隣のQuad LVへのアクセスが便利)

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他のホテルや施設へのアクセス、私有地であることから安全性の面について説明を受ける

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リムジン2台目(Flamingo LV から Paris LVに移動)

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Paris LVのフロントから会議場までの通路

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Paris LVの会議場入り口付近

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Paris LVの分科会場(ほかにも1000名以上のスペースの会場もある)

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Paris LVの分科会場(スクール形式)
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Paris LVのRed room

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Paris LVのSuite room

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 Paris LVの会議場ホワイエ

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リムジン3台目(Paris LV から宿泊しているホテルまでの移動)

 

そこで、皆さんの気になるお値段ですが、国際会議の規模によって交渉次第で変わります。ただし、例えば、150名の国際会議で参加者の7割が会議ホテルに宿泊する場合、3日間の会議で、コーヒーブレイク、立食のレセプション、会議室使用料込みで、例えば1〜2万ドルなどという感じになります。日本のホテルと比べて破格です。会議があるから、ホテルに宿泊してもらえる、ホテルに宿泊してもらえるから、朝食、昼食、ディナーの需要がある。そして、ショーやバーなどの需要がある。だから会議場は安く押さえて、主催者に出来るだけ参加者を増やす努力をしてもらおうという、きわめてスマートな考えです。ホテルの宿泊料金も交渉によっては一般の予約サイトより2〜3割安く設定してもらえます。日本のコンベンションの場合だと、ホテルの多くは、定価が決まっているか、または交渉の余地がないか、あるいは、見積りをとるとびっくりするくらい高い価格が提示され、開催意欲が下がるときもありますが、ラスベガスだとやる気がわいてきます。

3月 01 2014

MICEブランディングに関する初級講座

企業活動において、顧客を増やすためには、自らの強みを伸ばし、弱みを克服し、チャンスを活かし、脅威を取り除いたりうまく利用したりすることは、基本中の基本です。また、活動を取り巻く環境をきちんと理解した上で、どのようなアクションをとるかよく考える必要があります。例えば、ある商品に関してそれが業界初であったり、サービスに関して全く新しい形としてリリースする場合には、市場に受け入れてもらえるように「なじみのある姿」として見せる必要があります。例えば、新しい食べ物を発明したとします。食べてみるととてもおいしいのですが、これまでにないビジュアルである場合、多くの人はそれまでに見たことがある類似したものから想像して行きます。夕食用の食材で、味は魚介類のエキスを含んだ病み付きになるものですが、ビジュアルがドッグフードやシリアルのようなものだとどうでしょうか?普通に売っていてはすぐに市場から姿を消すことは簡単に予想できます。そこで、ゴボウ天やミートボールのような形に成形すれば、多少は売れるようになるでしょう。このように、多くの人は見た目や持っている情報で意思決定を行う場合が多いのですが、MICEの場合も同様です。一方、すでに多くの企業が同様の商品を販売する場合はどうでしょうか?その場合、市場においてより優れていることをアピールする必要があります。地域によっては、補助金を充実させたり、あるいは地域の観光資源をMICE向けにアレンジしたりすることによって多くの国際会議やインセンティブツアーを誘致しようと試みています。このように、主催者の意思決定において、最初の印象で決定を行うという特徴と、他より優れていることを感じる特徴、この2つの特徴をもつことが主催者の心を動かす重要な鍵と言えます。下の写真は、全日空とデルタ航空により発表されたマイレージの加算に関する改定発表のウェブページの一部分です。昨今、航空会社のマイレージはかなりインフレ気味になっており、いわゆる改悪と呼ばれる改定が多いのですが、人によっては良い改定であったり、あるいはあまり関心のなかった層にとっては、良い改定であると感じさせることもできるわけです。

 

 

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MICEに関して、最初の印象で決定を行うという特徴に関しては、国際会議を誘致したり、インセンティブツアーを誘致したりする場合も、例えば地方都市が不利なのは、主催者側が想像する地方都市のインフラの不整備やアクセス性ばかりが頭に浮かび、その地域の本質を理解せずに、視察でさえ候補地として上がりません。これらを克服するための政策が重要ですが、その一つがいわゆるブランディングです。

ブランディングには、いくつかのやり方がありますが、最も簡単な方法の一つを考えてみましょう。

 

手順1:地域がどこに位置し、どのような特徴があるか挙げる

手順2:地域の良さをできるかぎり多く挙げて見る

手順3:手順2の地域の良さを客観的に分析し、独りよがりになっていないか考える

手順4:手順3での分析を、「良い」「無名」「その他」3つのグループに分類する。

手順5:地域の不利な部分をできるかぎり多く挙げて見る

手順6:手順5で挙げた地域の不利な部分について、ポジティブに表現できるものはポジティブに表現する

手順7:手順1、手順4、手順6を一つにまとめて記述し、関連がある内容については統合する

手順8:手順7でまとめたものからキャッチフレーズをできるだけ多く挙げる

手順9:自らが考える望ましい姿と、手順8で挙げたキャッチフレーズのギャップがあれば、どのように克服するか考える。この際に、例えば新しいホテルを建設するなどの克服不可能な方法は考えないようにする。

 

以上により、冒頭で述べた「最初の印象」をより良く見せて、「他より優れている」状態にする方法が具体的になりました。これをベースとして、広告やウェブページなど、顧客に見えるものをつくって行くとともに、多少の時間はかかりますが実際の事例をいくつかつくって行き、関連をもたせることでブランディングが強化されます。

具体的な詳細に関しては、各種講演などでご説明します。ここでは簡単な例を挙げながら説明しましょう。あくまでも一例ですので、複数の地域を挙げています。実際上は、すべて一つの地域で考える必要があります。あしからずご了解ください。

 

手順1:「長崎」を例に考えると、地理的にはアジアに近い。文化的には、ヨーロッパや中国と関係がある。

手順2:「山形」を考えると、山形牛、りんご、山寺、温泉など。実際はもっと多数を挙げる。

手順3:例えば、手順2の「りんご」に関して他の県も持っているし、「山寺」に関しては地域になじみのある人以外は知らない。

手順4:例えば、手順3から分類するなら、無名:山寺、など。手順3のことに関して、すべて分類する。

手順5:例えば、商業施設が少ない、などを挙げる

手順6:商業施設が少ないということをポジティブに表現するなら、日本ののどかさを体験できる、など

手順7:省略

手順8:例えば、長崎なら、古来から世界にもっとも近い都市。山形なら、自然と日本文化と食を一度で体験。もっと熟考して外国人がうきうきするようなものをつくった方がよい。

手順9:外国人が来たときに、どのように地域を体験すればよいか分からないような時には、地域で留学経験のある人や英文科などを卒業した人を中心としたボランティアを構成する。空港からアクセスが問題になった場合は、アトラクション助成金をバスチャーターでも使えるように制度を変える、など。

 

以上により、「最初の印象」を改善できます。また、「他の地域より優れた面」を作り出すとともに、主催者などに説明できるようになります。それをふまえた上で、いくつかの事例をがんばってつくり、会議風景などの写真素材を増やします。そして、それらの素材とキャッチフレーズと地域の実情を併せて考えて、地域のMICE商品(いわゆるツアーなどの旅行商品のようなもの)をつくります。そうすることによって、様々な形態の国際会議やMICE活動に対応できるようになります。改善された最初の印象で、視察に来てもらえる数も多くなり、会議やイベントの性質ごとに視察プランを使い分けて、さらに説明も具体性が増します。当然、強みと弱みがありますので、ある地域がやっているように、200名以下の理工系、人文社会系の国際会議しか眼中にないというように方針を決めれば、さらに効果は強くなります。

2月 15 2014

MICE実務者向け事例集(1)

今回から定期的に、MICE実務者向け、特に「C (Convention)」と「E (Exhibition)」事例集について取り上げます。コンベンションビューローが提供するサービスは多様であり、無料または安価であることが多いわけですが、一方で主催者からはPCO並みまたはそれ以上の様々なリクエストを受けることが多いのも事実です。また、悲しいことに実力レベルの低いPCOを支えなければならないことも少なくはありません。実情として、コンベンションになじみのない主催者はコンベンションビューローを単なる一営利企業と思っていることも多いです。また、本来主催者がすべき業務をビューロー担当者が行うように求めたり、さらにはエスカレートしていき、様々な無理な業務、ビューローのサービス外の業務を押し付けることもしばしばあるようです。今回は、特にそのような状況における様々な問題をどのように解決すれば良いか、解決策や対処法について考えてみたいと思います。

 

1.主催者が歓迎看板をビューローの支援外である会場近くの道路において欲しいと要望しています。どのように対処しますか?

コンベンションビューローによっては過去にこのような支援の経験があり、ある種の簡単な手続き方法がある場合はコンベンションビューローが主導して支援することは出来ると思います。しかし、原則的には、主催者がやるべきことです。実際に道路使用上の責任は主催者が負うべきであって、各種利用計画、申請は主催者が行うべきです。通常、道路上にのぼり旗をおくことは法律で禁止されており、県道、市町村道などでは掲示の仕方が制限されていることもあります。通常は県道や市町村道に掲示する場合は、通行の邪魔にならず、強風などでも倒れないよう掲示するなど、県や市町村の裁量に基づき指示されることが多いようです。のぼり旗や看板などの掲示は、許可ではなく、届けという形になることも多いようです。主催者に対しては、手続き方法、道路使用上の注意などを指示したり、県や市の担当者を紹介する程度の支援を行うことが望ましいとおもいます。

 

2.主催者がビューローをタダで使えるPCOと勘違いしています。どう説明すれば簡単に解決できると思いますか?

コンベンションビューロー担当者がコンベンション主催者を訪問する際に、もし主催者がこのような訪問がはじめての場合、主催者は単なる電気屋や文具屋などの営業と勘違いしてしまうケースは多いです。また、PCOや旅行会社と思われることも多く、門前払いをされたことがあるという声も多いです。主催者に話を聞いてもらえて、会議開催が決まったとしても、主催者はビューローをタダで使えるPCOのようなものであると勘違いすることも多く、ビューローのサービス外の業務を求めることもしばしばあります。例えば、会議開催用の機材や飲食物の調達を頼んだり、バンケット時の片付けを頼んだりなどがあります。ビューロー担当者としては誘致してきた会議を主催者の様々なリクエストに最大限応える気持ちになるのは当然ですが、初期の段階で「主催者がすべき業務」、「コンベンションビューローが支援する業務の範囲」、「PCOを活用する場合、PCOの支援範囲」など、コンベンション業務について大まかにも主催者に理解をしてもらうことが望ましいと思われます。また、コンベンションビューローが営利企業ではなく、非営利的な立場であり、PCOとどのように異なるのかについての理解も必要です。もし、限度を超えるリクエストがある場合、PCOを紹介でき、費用は大体いくらかを伝えることが重要であると考えられます。

 

3.国際会議経験のない主催者がいます。会議予算が200万円しかないと言っていますが、どのようにアドバイスしますか?

国際会議主催者が最も頭を悩まさせることの一つが会議予算の計画と支出に関してです。コンベンションにおいては、参加者によって参加費をころころとかえる訳にはいかず、また、過去の参加費がそのまま設定されることが多いです。従って、予算が多い、または少ない点に関しては周りが理解してあげることが求められます。例えば、学会のポリシーによっては、一般参加者は100ドル、学生参加者は50ドルにも関わらず、その参加費収入の範囲内で会議場借上や機材レンタル、レセプションやコーヒーブレイク、各種印刷物の発行などを含める必要があるなど、主催者にとっては頭を抱える問題があります。もし、予算が不足した場合、主催者が自費で補ったり、あるいは寄付金の受け入れに奔走することになることが多くなります。一方で、また学会によっては、予算計画のガイドラインで、バンケットの上限金額、コーヒーブレイクの上限金額を設定していることもあり、その場合、状況によっては主催者がケータリング業者との交渉が必要となる状況もあります。このような主催者の悩みを解消するために、コンベンションビューロー担当者が予算計画を支援できると望ましいと思います。例えば、どの部分を削ることができるのか、あるいはどの程度の費用がかかるのかなどを理解しておくことで、主催者が本来の主催業務に専念できるようになります。下記は、いくつかのモデルケースです。

 

予算210万円(参加費10,000円×参加者200名、寄付金10万円)

項目

金額

内訳

会議施設使用料

495,000

全体会180,000円×1室×2日

分科会15,000円×3室×3日

設備等レンタル費

115,000

プロジェクタ(大) 25,000円×1台×2日

プロジェクタ(小) 5,000円×3台×3日

マイクロフォンなど一式 20,000円

レセプション費

400,000

単価 2,500円×160名
印刷費

364,000

フライヤー 単価6円×2000枚

会議プログラム 単価400円×220冊

論文集(CD-ROM) 単価1,200円×220冊

コーヒーブレイク費

240,000

単価300円×160名×会期中5回
会議費

120,000

打合せ費 20,000円×3回

ボランティア打ち上げ 5,000円×12名

人件費

300,000

ボランティア 1,000円×25時間×12名
合計

2,024,000

 

※レセプションの人数について、参加者全員が参加できないことのほうが多いため、人数は多少割り引いている。また、印刷物を多めに発注するのは、寄付者や協力者への配布用として必要であるからである。会議施設は地域で最も安い公共施設、レセプションは立食でワインとスナック類、コーヒーブレイクはペットボトル飲料と簡単なリフレッシュメントを想定。

 

予算910万円(一般参加費50,000円×120名、学生参加費35,000円×80名、寄付金30万円)

項目

金額

内訳

会議施設使用料

2,440,000

全体会500,000円×1室×2日

分科会120,000円×4室×3日

設備等レンタル費

352,000

プロジェクタ(大) 140,000円×1台×2日

プロジェクタ(小) 6,000円×4台×3日

レセプション費

1,360,000

単価 8,500円×160名
バンケット費

1,760,000

単価 11,000円×160名
印刷費

1,684,000

フライヤー 単価6円×2000枚

会議プログラム 単価600円×220冊

論文集 単価7,000円×220冊

コーヒーブレイク費

640,000

単価800円×160名×会期中5回
通信運搬費

50,000

機材運搬費 50,000円
広報費

150,000

Web作成、管理費 一式150,000円
会議費

120,000

打合せ費 20,000円×3回

ボランティア打ち上げ 5,000円×12名

人件費

440,000

基調講演者謝金 50,000円×4名

ボランティア 1,000円×20時間×12名

合計

8,996,000

 

※レセプションの人数について、参加者全員が参加できないことのほうが多いため、人数は多少割り引いている。また、印刷物を多めに発注するのは、寄付者や協力者への配布用として必要であるからである。会議施設は一般的なホテル、レセプションは着席でワインとオードブル類および軽食、バンケットは着席で一般的なコース、論文集は有名な出版社より出版、コーヒーブレイクはコーヒー等のケータリングを想定。

 

以上のような感じで、ある種の勘が必要とされる部分はありますが、予算と参加者規模、および日数によってどのくらいの予算規模であれば何が出来るのかが決まって来ます。予算が多ければ多いほど何も考えることはなくなります。一方で予算が少ない場合は、色々な課題が出てきますので、考えに考えて計画を立てる必要が出てきます。支出には固定費とそうではないものがあり、例えば、印刷費などに関して手間はかかりますが指値で交渉したり、あるいは機材等を持ち込み、また、出来る限り持込みで実施することでよりコストカットが可能になります。一方で、複数の会議を合同で開催し、参加者規模が大きくなれば、印刷物やバンケットなどボリュームによりディスカウントがききますので、これもコストカットにつながります。

2月 01 2014

一問一答MICEの基礎知識

最近、日本国内どこに行っても外国人の方々を見ることが多いのですが、この10年間で観光庁のVisit Japanキャンペーンが功を奏して、年々訪日外国人旅行者数が増えてきております。

 

Q1: 日本から外国に旅行に行く人数と外国から日本を訪問する人数はどちらが多いでしょうか?

A1: 2009年以降は、新型インフルエンザ、リーマンショック、大震災などの影響で、訪日外国人旅行者数について増加は鈍化していますが、日本政府観光局の統計によれば、2013年は9月末の時点で約770万人でしたので、その時点で過去最高の訪日外国人旅行者数となる見込みであることは分かっておりました。結果的に、2013年末時点で1000万人を超えました。おそらくは2020年には年間の訪日外国人数1500万人はクリアできるのではと思います。一方、現段階で、国外へ旅行に行く人数は既に年間1500万人を超えており、年間2000万人に迫ろうとしています。

 

Q2: 海外からの訪日外国人旅行客の旅行の目的は何でしょうか?

A2: 旅行の目的は様々あります。大まかに3つに分かれます。一つ目が、一般の観光や知人の訪問など皆さんが想像しているタイプです。二つ目が、ビジネスでの訪日です。さいごに三つ目が、MICE活動での訪日です。ビジネスでの訪日は、取引での交渉や契約などの目的が含まれると思います。MICEは、ビジネスに近い側面をもちますが、金銭のやり取りがそこではあまり生じないタイプの旅行です。

 

Q3: MICE活動というのは、一体何なのでしょうか?

A3: MICEは、Meeting(企業等のミーティング)、Incentive tour(社内報奨旅行)、Convention and Conference(国際会議)Exhibition(展示会)の略称です。これらを含む旅行は、ビジネスといえばビジネスですが、地方都市や景勝地で開催されることも多く、エクスカーションやアトラクションも含まれるので、観光的な側面も含まれます。近年、MICE活動が世界的に注目を集めており、我が国でも厳しい予算の中、奮闘している状態であると言えます。海外諸国は大きな予算のもとMICEおよび一般観光に対して、政策を推進しておりますが、日本はまだまだ悲しい状況です。

 

Q4: MICEでの旅行は一般の観光と本質的に何が違うのでしょうか?

A4:  一般の観光での予算は旅行者ごとに違います。安いところにたくさん泊まる代わりに、何泊もする人もいれば、10年に一回の旅行をゴージャスに過ごす人もいます。一方で、MICEにおいては、ある一定の品質が定まっております。例として、MICEの一つである国際会議について考えてみます。宿泊に利用するホテル、ホテルなどの会議室利用、会議後のレセプションやディナーバンケット、開催地の特色をPRするアトラクション、質の高いコーヒーブレイク、ISBNを持つ製本出版される資料集など、すべてにおいて高いレベルが求められます。

 

Q5: なぜMICEは品質を高く保つ必要があるのでしょうか?

A5: 上に説明しました通り、一目でお金がかかっていることが分かります。この国際会議の中身だけではなく、国際会議の事前打合せ、VIPのみのディナー、会議で出会った人同士が会議後に会食なども、高いレベルが求められます。一見、無駄が多いように感じる方もおられるかも知れませんが、このレベルを下げてしまえば、会議自体が快適ではなくなれば、海外からの会議への参加者が減ってしまい、その結果将来的に我が国の経済的あるいは技術的な優位性を失い、産業力が下がることにつながります。

 

Q6: MICEは地域を発展させる潜在力があるのでしょうか?

A6: 一般の観光に比べて、例えば国際会議は旅行者一人あたりの経済波及効果が6〜8倍といわれています。つまり、参加者500名の会議があれば、一般観光での旅行者3000名に相当します。ひと月に2回程度国際会議が誘致できれば、7万人以上の一般観光客数の経済波及効果に相当します。つまり、観光産業や観光資源で目立たない都市でも、国際会議誘致を成功させることができれば、地域を大きく変える力を持っています。その結果、社会的波及効果や文化的波及効果も大きくなります。社会的波及効果とは、地域への訪問者が増加することにより、交通基盤整備の充実や訪問者をより良く迎える観光人材育成の充実があります。文化的波及効果とは、例えば、医学関係の会議の場合、市民講座等が実施され、市民の健康に関する意識がアップします。

 

Q7: MICEはなぜ地域を発展させられるしょうか?

A7: バスツアーや単純な旅行ですと、地域に1泊程度しかしないことが多いのですが、国際会議を例に出しますと、会期が5日開催されたりします。つまり、6泊程度の滞在をすることになります。また、国際会議では、上に説明した通り、様々な支出がありますが、多くが地域で消費されます。地域の印刷業者で会議プログラムが印刷され、地域のケータリング業者によりコーヒーブレイク用の数種類の飲食物が提供されることが多い訳です。コーヒーブレイクの例を挙げますと、5日間の会期の国際会議で参加者500名だとします。コーヒーブレイクは午前と午後1回ずつ実施され、数種類の飲み物放題といくつかのお茶菓子を含めて一人当たりの単価が800円だとすれば、それだけで400万円になります。

 

このように、大きなビジネスチャンスと大きな地域の変革と発展を生むのがMICEです。また、MICEと一般観光も関連性が高く、同時に発展させることが望ましいと言えます。例えば、MICEの旅行者が会議参加のついでに、地域を観光したとします。そもそもMICE旅行者は政府関係者、企業役員、大学教授等の情報発信力やその信頼性が高いといわれる人たちですので、影響が大きいことはいうまでもありません。もし、地域への印象が良ければ、その評判は広まりやすく、ますます地域がより良くなる機会を得ることになります。

1月 15 2014

ユニークベニューの開発と実践

地域の良さを取り入れた国際会議開催、支援は多くの主催者やコンベンションビューローが目指すところですが、私が強調する国際会議開催のときに考えるべき3つのこと「(参加者を地域や会議場に)慣れさせる」、「(参加者がより交流できる環境を作り)集わせる」、「(参加者が今度はプライベートで訪れたいと考えるくらい)感動させる」を原点として、会議の開催準備と演出を考えていけば、より成功が近くなります。さて今回は、これまでに私がプロデュースした30以上の国際会議のうち日本国内で開催した国際会議でのユニークベニューについて紹介したいと思います。地域のビューローとの協力のもと、珍しい場所で会議を実施し、成功をおさめています。

 

IIAI AAI 2013(島根県松江市)

会期は、2013年8月31日から9月4日で、参加規模は約150人でした。松江コンベンションビューローのご協力のもと、国際会議としてはじめて国指定文化財である松江城の米蔵跡でのレセプションを開催させていただきました。雨の心配もされたのですが、レセプションと同時に雨も降り止み、参加者にとっては幻想的な雰囲気の中、各種カクテルや赤ワインを提供し、参加者同士の交流も盛り上がりました。レセプションは国際会議初日にその日のセッション終了後、参加者をバスで松江城の周りの堀を遊覧する堀川遊覧船の船着き場までお連れし、参加者は松江の武家屋敷の見学、堀川遊覧乗船、そしてその後松江城への登城を体験しました。その後、レセプションを実施しました。また、会議では、初日にウェルカムカクテルを準備し、バーテンダーによる各種カクテルを提供しました。

 

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AAI 2013 ウェルカムカクテル

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AAI 2013 レセプション

 

 

IEEE/ACIS ICIS 2013(新潟県新潟市)

会期は、2013年6月16日から19日で、参加規模は約150人でした。新潟MICEセミナーに参加された方々は、ICIS 2013のバンケットに参加頂きましたが、ここでは市場でのバンケットを開催しました。そこでの国際会議バンケットははじめての実施であり、ユニークベニューの新たな発掘となりました。バンケットにおいては、ミス新潟からのご挨拶、地元のバンドグループによる生演奏とともに、鮪の解体ショーを実施してもらいました。解体された鮪は、そのまま刺し身や寿司といった外国人参加者も喜ぶ食として提供することができました。また、地酒バーを準備し、美食とともにリラックスして美酒も味わうことができる場をつくりました。

 

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鮪の解体ショー

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ICIS 2013 バンケット風景

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ICIS 2013 地酒バー

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バンドグループの生演奏

 

 

IIAI AAI 2012(福岡県福岡市)

会期は、2012年9月4日から6日で、参加規模は約140人でした。国際会議のレセプションは会議初日のセッション終了後、九州大学内の歴史的な建造物でのワインレセプションとなりました。レトロな雰囲気のもと、国際会議委員長のかけ声のもと、ビンゴ大会も催し、参加者にとってエンターテイメント性の高いレセプションの実施が実現しました。また、国際会議バンケットは、九州大学のキャンパスにほど近い居酒屋での実施となりました。バンケットには、名誉委員長である九州大学総長のご挨拶、福岡観光コンベンションビューローの専務理事のご挨拶とともに、参加者は福岡の地鶏コースを堪能しました。居酒屋でのバンケット開催には賛否があります。日本人参加者にとっては、日常すぎるからです。しかし、外国人参加者にとっては、日本文化そのものを体験することができるため、非常に満足する場となることは間違いありません。

 

 

 

IEEE/ACIS ICIS 2010(山形県上山市)

会期は、2010年8月18日から20日で、参加規模は約200人でした。各種雑誌等でしばしば取り上げられておりますが、温泉旅館での国際会議は、やはり全くあたらしいユニークベニューであり、日本人参加者だけではなく、外国人参加者にとっては、会議期間中にじっくりと日本文化に身をおくことができる貴重な体験となったことでしょう。とくに、国際会議の開催、宿泊、バンケット、レセプションともに旅館で開催し、また宿泊については従来の概念を打ち破り、一名一室となるように準備したことです。他の記事で多く紹介されておりますので、詳細をお知りになりたい方はそちらをご覧ください。紹介された雑誌のうち、いくつかを紹介します。

・  ルネッサンス, 山形コンベンションビューロー, Vol.36, 2011年1月

・  観光経済新聞, 2011年2月12日号

・  学術の動向, 日本学術振興会, 2011年5月号

・  IEEE Spectrum, Vol.48, No.1, p.15, 2011年

・  Congress Nippon, Spring, p.13, 2011年

・  Headquarters Magazine – Europe Edition, Vol.42, pp.38-39, 2011年

・  Headquarters Magazine – Asia Edition, Vol.4, pp.25-27, 2011年

・  MICE Japan, pp.46-47, 2011年3月号

・  週刊ダイヤモンド, 2011年12月9日号

・  山形新聞, 2011年12月15日号

・  週刊トラベルジャーナル, 2013年10月15日号, 2013年10月

 

基調講演10

ICIS 2010 基調講演

案内所13

観光案内デスク(山形CBご協力)

ウエルカムR12

 ICIS 2010 会議レセプション

コーヒーブレイク2

ICIS 2010 コーヒーブレイク

レセプション2

バンケットにワンドリンクとともに入場

レセプション21

ICIS 2010 バンケット風景

 

 

SNPD 2012(京都府京都市)

会期は、2012年5月28日から30日で、参加規模は約170人でした。この会議のバンケットは、京都駅前のアサヒビアレストラン「スーパードライルネサンス」にて開催しました。予定より、参加者数が多かったため、少しばかり狭く感じましたが、日本のビール専門のレストランで開催でき、参加者にとっては珍しく感じられたと思います。提供されるビールは、非常に新鮮であり、多くの参加者のグラスは次から次へとすすんでいました。この国際会議では、会議レセプション実施の代わりに、会議2日目に大きめのセッションルームを茶会用にアレンジし、抹茶を楽しむことができるスペースとして提供しました。特に外国人参加者にとっては、会議で疲れた頭と体を休める空間として使ってもらえたことが何よりでした。この茶会の企画は、京都工芸繊維大学の宝珍教授のご立案でした。

1月 01 2014

コンベンション誘致成功へのヒント

あけましておめでとうございます。本年もどうぞ昨年と変わらぬ皆様のご支援、ご協力をよろしくお願いします。2013年の訪日外国人旅行者数は、2013年12月10日に史上初の1000万人を超えました。経済波及効果において大きく寄与するコンベンションの開催件数の増加も実現し、我が国のMICE政策はさらなる一歩がのぞまれるところだと思います。

 

さて、今回はコンベンション誘致の実務担当者向けにコンベンション誘致の鍵を握る主催者の視察に関するトピックについて説明したいと思います。ロビー活動や海外の学会との調整、Meet Japanなどの視察プログラム関連についてはまた他の機会に取り上げることとし、もう少し、基本的な部分に触れたいと思います。国際ミーティングエキスポ(IME: International Meeting Expo)などにおいて、多くの自治体やビューローが一件でも多くコンベンションを誘致する努力をしております。展示ブースの工夫や、地域の観光親善大使などとともに熱心な誘致への努力をしており、さらなる飛躍が期待できるところです。MICE誘致への取り組みを新たに始められたところも見られ、今後が楽しみです。今回の記事は、特にMICE誘致に不慣れな地域の担当者の方々にとって役に立つと思います。また、これまでに誘致を成功された方々にも、さらに視察プログラムの品質向上のために一読していただければと思います。

 

新たにMICEに取り組んでいるビューローの悩みを解決

まずは、IMEなどへの出展を新たに始められた地域は、どのようにプロモーションをすれば、より勝率が上がるか?を目的として説明します。基本的なことですが、次のことに気をつければと思います。

(1)MICEと観光は全く別ものであるという認識を持つ:当然ながらMICE活動においては、観光に関する側面が少なからず含まれています。というより、むしろ観光の魅力で誘致が成功する例も多いでしょう。しかし、コンベンション・展示会での訪問者は、飽くまでもビジネスが目的です。また、インセンティブツアーに関しても、観光だけが目的の例は少ないでしょう。従って、主催者にはコンベンションや展示会に関わる説明をきちんとすることが重要です。展示ブースで単に、「〜(場所)でのコンベンションはいかがですか」、と説明しても素通りする主催者が多いでしょう。まず、集客の決め台詞をきちんと決めておいて、それを理路整然と説明できる説明内容をまとめておくべきです。例えば、集客の決め台詞とは、「感動するコンベンション日本一の〜(場所)、主催者への支援も特色があります」、といわれれば素通りした主催者のうち立ち止まってくれる人もいると思います。当然、そのようなユニークベニューや後述するような支援をつくっておくと良いでしょう。

(2)説明のポイントを絞る&観光案内を中心においてはならない:コンベンションでの訪問者は観光が目的ではありません。時々、観光のことしかブースで説明されない地域もありますが、多くの主催者は学会や国際会議での開催にふさわしいかどうか、ハード面およびソフト面を聞きにきているわけですので、コンベンションを中心とした説明をすべきです。ただし、説明の工夫の内容は様々あって良いと思います。例えば、話の流れとして、観光について1割話した後、コンベンションについて3割、バンケットやケータリングについて2割、エクスカーションについて1割、再度コンベンションについて2割、再度観光について1割という流れだと、コンベンションの面でも、ソーシャルファンクションの面でも、観光の面でも印象が残りやすく、より良い印象を与えるでしょう。料理の話を例に挙げれば、同じ食材でも調理の腕の仕方によって大きく味が変わります。それと同様に、説明の工夫の仕方によって、同じ内容でも大きく印象が変わってきます。

(3)支援内容について差別化をはかる:例えば、会議バッグの無償または安価提供がある、あるいは歓迎看板を準備するなどのことを説明される地域がありますが、ほとんどの地域で同様の支援が実施されているため、食傷気味に感じる主催者は多いと思います。重要なことは、他地域とはどのような点で異なり、自分の地域はMICEに関してどのように優れているかをPRすることが重要です。例えば、支援プログラムの郷土アトラクションについて、単にそれが提供されるというのではなく、「このアトラクションは、参加型アトラクションで外国の方々を中心に、興味深い日本文化のエッセンスを短時間で体験できます。そして、アトラクションでは、アトラクションで登場する芸人と一緒に記念撮影のサービスがあり、撮影した写真は、会議開催後に会議参加者のみが閲覧できる会員ページにアップされます。また、家族再訪プログラムもあり、会議参加者のうち、家族などをつれて2年以内に再訪された参加者には、申し込みがあれば参加者が映っている写真をラベルとしたオリジナルの地酒を進呈します。アトラクションの提供はどの地域でも提供していると思いますが、写真撮影プログラムや再訪歓迎プログラムは私たちの地域のみ実施しており、会議が終わっても直接参加者の心に響く支援が私たちの売りです。」のように、支援プログラムとPR方法を一緒に考えていくべきです。

 

視察において会議主催者の心をつかむ

主催者立場においては、参加者がここに来たときにうれしく思うかということを考えます。また、それに気づかない主催者にはそのように気づいてもらうようにしたほうが良いです。例えば、視察を始めるにあたり、ビューロー事務所での説明においては、まずは担当者だけではなく、トップが熱心であるかどうかを伝えることが重要です。

(1)参加者が到着したような状況で視察主催者をお迎えする:例えば、すでに開催候補の会議名が分かっている場合、会議名のプラカードを持って迎えると、視察する主催者はその気分になることができると思います。また、近年米国を中心に流行っているタブレット端末を使った電子プラカードを使えば、工夫したように見えて主催者からの印象が変わります。また、地元の法被をはおってお出迎えをし、「国際会議開催時には、参加者歓迎においては同じ法被をはおってお出迎えをします」と言うだけでも印象が変わってきます。また、空港や駅でのお迎えの後に、すぐに自動車で視察先、ビューロー事務所に行ってはいけません。まずは、主催者をお出迎えした後に、空港や駅におけるインフォメーションデスクや市街(会議場)までのアクセスに使う鉄道やバスの利便性を示します。また、案内表示が英語で示されていることもきちんと認識させます。特に、アクセスに自信のない地域は、それをしっかり示すことで、ハンディキャップを多少解消できます。コンベンションを誘致しようと考えている地域でしたら、国際会議の際に空港や駅に追加で多くの案内を開催側がおかなければならないような状況は論外で、そのような地域があれば解決すべきでしょう。

(2)会議場の視察:会議場の候補が複数あり、それを短時間で視察する場合も多いと思います。視察はあくまでもその会議場で会議が問題なく実施できるかをチェックするものですので、アパート物件を矢継ぎ早に見学するのとは違います。時間をかけるところはかけて、かけないところはかけないで、メリハリの効いた見学案内が重要です。そのためには何をすれば良いでしょうか?答えは簡単です。主催者が開催しようとしている会議の規模、性質、外国人参加率、会議での各種イベントを知っておけば良いのです。しばしば、ベルトコンベアに乗せるがごとく、決まりきった施設の案内を経験することがあります。つまり、ある種のマニュアルがあるのか、あるいは単に施設見学案内担当者の能力が低いのかのどちらかでしょうけど、そのような見学は主催者にとって見学の意味が薄れます。具体的によく見られる状況を説明します。施設を一通り案内する際において、ある会議室を見学案内されているとします。そのときに、「ここは60人程度の分科会で利用されます」と言って、時間をかけてその分科会場を見せられたとします。もし、視察している主催者の会議の参加者規模が300名で、会議は2パラレルセッションで開催される場合、この分科会場視察は何の意味があるのでしょうか?主催者が開催しようとする国際会議の内容を良く知り、時間をかけてみせるところは見せる、さっと紹介程度にするところは短時間で見せるなど、メリハリをつけた見学が重要です。

(3)地域の食について:学会や国際会議においては、多くの参加者が開催地を訪問し、滞在する訳ですので、当然ながら数回の食事をするわけです。3日間の会期の会議の場合、3泊4日の滞在をする参加者は、朝食と夕食を3回、昼食を3〜5回とります。とくに日本で開催される国際会議の場合、外国人参加者の食に対する期待は大きいようです。その期待に応えるべく、いくらかの主催者は視察を行っている間に、バンケットやレセプションで提供するにふさわしい地域の食を考えています。視察の際の昼食や夕食について、もちろんながら地域の良さを示すとともに、それらの美食がどのようにバンケットで提供できるのかなどを説明することにより、主催者は会議のソーシャルファンクションのイメージも明確にすることができます。

(4)地域の文化について:地域の文化は、多くの参加者にとって関心のある事柄であり、それをより良く伝えることが重要です。地域の文化を伝える方法は様々ですが、会議参加者にとって最も身近なものは会議のエクスカーションや観光であるといえます。参加者が体験しうる主要な文化について主催者の視察においても説明することは、参加者が地域をいかに楽しんでくれるかということと関連しています。押しつけではなく、自然体での伝達が重要です。視察時においては、バンケット会場との組み合わせとしてそれらを紹介するのはもちろんのこと、参加者が体験するであろうエクスカーションや観光について、体験型として伝えることが望ましいです。例えば、織物体験や焼物体験などはそれにあたります。国際会議においては、しばしば参加者にお土産を贈呈することがありますが、それを体験型の活動で置き換えても良いと思います。例えば、初日のレセプション開催の前に体験型の活動を実施し、翌日の正午以降に受付デスクにおいて、体験型活動で制作したものを受け取るなどの方法で実施も可能です。そのように、参加者を感動させるためのしくみをいかに発見して、実現できる方法を見いだすかが重要な鍵となります。また、そのような材料をどれだけ多く準備するかも、PRできる強みとなり、視察プログラムにおいてより主催者を引きつける要素になり得ます。

 

今回は、展示会などでのMICEを中心とした来場者をいかに引きつけるか、いかに足を止めてもらい説明を聞いてもらえるかについて説明しました。また、主催者を地域に招請し、地域のMICE資源を見学してもらう視察プログラムについてのテクニックのいくつかを紹介しました。当然ながら、全てに適用可能という訳ではなく、地域や季節などによって多少は変わる部分もあると思いますが、標準的な目安にしてもらい、実践に役立てていただければと思います。さらに、アレンジを加えて、その地域が持つ強みをより引き立たせる工夫があれば、より視察プログラムに参加している主催者にとっては、そこで国際会議を開催しようと思う強力な動機になるでしょう。

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